最近、一部損保社では「分業型」の動きが強まっています。具体的には、更新契約を代理店ではなく、保険会社直営代理店のコールセンターが電話やメールで手続きを行い、代理店にはのれん代程度の手数料だけを支払うという制度です。この制度は、過去にあった継続専門員制度の再来を思い出します。本日は、この制度が真にお客様本位なのか、代理店の価値とは何かを改めて考えてみます。
1.更新契約は代理店経営の生命線
損害保険の更新契約は、代理店にとって収入手数料の大半を占める重要な領域です。にもかかわらず、現状では、電話募集、メール募集、オンライン手続き、半自動化された更新案内など、代理店の関与が少ない募集形態が常態化しています。しかし、更新契約は単なる事務手続きではありません。本来は、お客様の生活や事業の変化を確認し、新たなリスクを発見する提案の入口のはず。新規ニーズ発掘の最大の機会であり、代理店の価値が発揮される場面であったはずです。
2.分業型は、継続専門員制度の焼き直し
かつて損保業界には、継続専門員制度という制度がありました。更新契約の手続きは、継続専門員が集中して行い、一般の募集人は新規だけを担当するという仕組みです。今回の分業型は、形こそ違えど、構造は非常に似ています。
〇 更新契約を保険会社の直営代理店や専門会社が直接行う
〇 代理店には一部手数料を支払い、多くは直営代理店や専門会社が得る
〇 対面による新規ニーズ発掘の機会が失われる
〇 代理店の収益構造が弱体化する
これらは、継続専門員制度が抱えていた課題そのものです。そして生保には、分業型や継続専門員制度はありません。損保更新契約固有の制度です。
3.品質を理由に分業型を推進する違和感
品質評価制度は、本来、代理店の品質向上を目的とした仕組みです。しかし、最近はこの制度を理由に、一部の評価を充足できないことを理由にして、保険会社の直営代理店等が対応する、代理店には最低限の手数料だけ支払うという流れが生まれています。これは本当に、お客様本位なのでしょうか。
更新契約は、お客様の生活や事業の変化を丁寧に確認し、必要な補償を提案する場です。画一的な対応を行う制度では、どうしても限界があります。品質の高さを一律にコールセンターに求めることには、より慎重な検討が必要ではないでしょうか。
4.ネット保険会社のほうが合理的
もし更新契約を完全に自動化し、コールセンターが統一的に対応するなら、それはネット保険会社のモデルに近づくことになります。ネット保険会社であれば、以下のような対応が可能になるでしょう。
〇 サービスの統一化
〇 AI導入による手続きの高度化
〇 AIやデジタル技術による利便性向上
〇 コスト構造の合理化
中途半端に代理店モデルとネットモデルを混ぜてしまうと、かえってお客様にとって分かりにくい仕組みになります。
5.代理店の価値を再定義すべき
今回の分業型の動きは、代理店にとって危機であると同時に、自分たちの価値を再定義する機会でもあります。代理店の価値とは何か。
〇 お客様の生活変化や事業活動リスクを把握する力
〇 リスクを発見し、提案する力
〇 長期的な関係性を築く力
〇 地域に根ざした対応力
〇 事故対応や相談の伴走力
これらは、コールセンターや自動化では代替できません。更新契約は、代理店の価値が最も発揮される場面です。ここを保険会社が取り上げる流れには、慎重な議論が必要と考えます。
<まとめ>
〇 更新契約は代理店の収益の柱であり、提案の入口
〇 分業型は継続専門員制度の再来に近い構造
〇 品質評価制度を理由に更新を取り上げるのは本末転倒
〇 コールセンター更新はお客様本位とは言い難い
〇 今こそ代理店の価値を再定義すべきタイミング
代理店経営者が迷っているのであれば、一度ストップをかけて、代理店の価値を再定義することから始めるべきと考えます。一方で、分業型契約を扱う代理店にだけ、保険会社が特別対応や指導を行うならば、過度な便宜供与に該当しないように気を付ける必要があります。業界の方向性が、お客様本位と代理店の持続可能性の両方を満たすものであることを願っています。



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