私鉄大手社の線路内で除草作業をしていた作業員4名が、特急列車と接触して死亡するという痛ましい事故が発生しました。見張り員は複数配置されていたにもかかわらず事故が起きました。国土交通省は該社に対して異例の警告文書を発出しました。本日は、該社の目的である、列車の正常な運行と、作業員や見張り員の安全で正確な作業完遂と言う観点で、考えてみたいと思います。
1.事実関係の整理
報道によれば、事故当日は以下の体制でした。
〇 作業員7名、見張り員3名(中継見張り員・列車見張り員など)
〇 列車接近時は、警笛2回が必要
〇 作業員退避後に旗で運転士へ合図
〇 作業前にミーティング(KY活動)が行われていた可能性が高い
しかし実際には、警笛は1回、作業員が線路内にいたのに退避完了を通知、見張り員同士の連携不足があった、警笛通知が作業員に伝わっていなかった可能性があるなどの事象が、報道されています。手順に従って実施したが、作業員の安全な退避ができなかったということです。
2.連携不足は組織の問題という観点
鉄道工事では、元請・一次下請・二次下請が混在する為、作業員と見張り員は同じ企業の社員ではない可能性があり、必ずしも日本人同士とは限りません。まして外国人同士であれば、意思疎通や連携が不足する可能性があると考えるべきです。作業開始前に、メンバーと役割の確認、作業目的と手順の確認、退避ルールと警笛、緊急時の対応、意思疎通方法などをミーティングで確認します。これは、安全に作業を行い、業務を完成させる為に行います。もし、外国人との連携不足やミーティングが形骸化していれば、国交省が背後要因に課題があると判断したことに、違和感はありません。
3.安全手順が形骸化する組織の共通点
今回の事故に限らず、複数の企業の従業員が共同で作業を行う現場においては、文化的弱点が背景にある可能性があります。
〇 手順の実効性を確認するルーティンになっていない
〇 見張り員制度が、人に依存する仕組みになっている
〇 外国人との連携不足が生じる可能性がある
〇 現場の全員が安全で安心できる職場や雰囲気がない
〇 過去に現場で起きたヒヤリハット事例が共有されていない
〇 退避完了の合図が儀式化している
〇 現場の安全実態を経営に報告していない
これは、安全で安心の仕組みがあっても、文化が伴わなければ機能しないという典型例です。
4.国交省が警告文書を出した背景を読み解く
国交省は、事故直後に該社へ警告文書を発出しました。これは極めて異例です。
〇 手順が形骸化していた
〇 組織統制が機能していなかった
〇 安全文化が弱かった
〇 作業前の意思疎通が不十分だった可能性
〇 見張り員制度が限界に達している
〇 外国人と日本人、外国人同士の連携不足が事故発生の要因の可能性
つまり、背後要因、言い換えれば組織文化や安全統制に課題があると判断したためと推測できます。
5.再発防止策は人に依存しない仕組みづくり
今回の事故を踏まえると、再発防止策は、当日に初めて会う別会社の人との共同作業において、誰であっても同じ理解が可能な仕組みにすることと思われます。
例えは、次のような仕組み化が思い浮かびます。
(1)見張り員と作業員に共通する自動化・機械化制度
〇 列車接近をセンサーで検知して自動で警笛を発信
〇 作業員に自動で警報を送信
〇 見張り員の判断や操作ミスを補完する仕組み
(2)通信装備の導入(MBLのピッチコムに類似した仕組み)
〇 作業員と見張り員がイヤホン+マイクで常時接続
〇 見張り員の警告が確実に届く
〇 作業員の状況をリアルタイムで共有
(3)作業前ミーティングの確認事項の再構築
〇 作業の目的を全員に浸透させるミーティング
〇 役割分担の明確化と危険予知の共有
〇 下請け企業間の意思疎通の強化
(5)経営による現場の安全文化の把握
〇 手順の実効性を定期的に評価する仕組みづくり
〇 安全文化サーベイの導入
〇 現場ヒアリング
<まとめ>
今回の事故が示したことは、次の4点に集約できます。
〇 手順通りに運用されていても、事故は起きる
〇 見張り員と作業員の連携不足は、組織文化や国際化対応の弱さの表れ
〇 作業前ミーティングが形式化すると、危険が共有されない
〇 再発防止策は、誰であっても同じ理解ができる仕組みが必要
安心と安全は、仕組みと文化の両輪で守るものです。各社において、取締役会やリーダー会議などにおいて、本テーマを取り上げて、安心と安全について、考え直すきっかけにしてください。
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