最近、保険会社による代理店監査・点検(以下、代理店監査)のご相談が増えています。代理店監査の目的は、保険会社が代理店の体制整備状況を確認し、必要に応じて教育・管理・指導を行うことですが、業法改正により、その範囲が広がっています。本日は、監督指針や業法の条文を踏まえながら、代理店経営者として理解しておくべきポイントを整理します。
1.目的
金融庁の監督指針では、代理店に対する監査の必要性について、次のように記載されています。
「保険会社は、代理店の業務運営が法令に適合し、顧客本位の業務運営が行われているかを定期的に確認すること。」
また、保険業法第100条の2では、保険会社に対して次の義務が課されています。
「保険会社は、代理店の教育、管理及び指導を適切に行わなければならない。」
つまり、代理店監査は「体制整備の確認」と「教育・指導」が目的です。しかし実務では、教育・指導といっても、実際にはフォローアップという名の確認作業 が中心であり、課題解決まで支援してくれるわけではありません。課題の把握・解決は、代理店自身が行う時代になったとご理解ください。
2.業法改正で追加された趣旨
業法改正に伴い、代理店監査では次の確認が追加されました。
〇 代理店の体制整備状況
〇 代理店業務品質評価制度の事前点検(評価に向けた取組み状況の確認)
このため、代理店監査の内容は以前より広く、深くなっています。ただし、ここで誤解が生まれやすい点があります。
3.代理店監査と業務品質評価制度は別物
最近、保険会社の営業担当者が、点検で指摘した項目をそのまま代理店業務品質評価制度の評価に結びつけようとするケースが見られるそうです。しかし、両者は似て非なるものです。
① 代理店監査・点検とは
〇 監査時点の体制整備状況を確認
〇 必要に応じて指摘・改善の要請
〇 後日フォローアップで改善状況を確認 → 「今どうか」を見るもの
② 代理店業務品質評価制度とは
〇 制度を受ける時点までの取組みを評価
〇 課題把握力・解決力・顧客本位の実践度を確認 → 「これまでどう取り組んできたか」を見るもの
③ 両者は別物である理由
〇 監査・点検=現状確認
〇 評価制度=継続的な取組みの評価
〇 点検の指摘を評価制度に直結させるのは誤り
〇 誤った言動があれば、監督指針や業法の条文を示して正す必要がある
代理店さんは、正しい知識で誤解に巻き込まれないことが重要です。
4.過度な便宜供与への過敏反応
最近の保険会社の営業部署は、法令で禁止されている「過度な便宜供与」に非常に敏感になっているそうです。中には、
〇 個別の教育指導は便宜供与に該当する
〇 代理店ごとの課題に合わせた支援はできない
などと、誤解している担当者もいます。これは明らかに誤った法解釈です。保険業法第100条の2では、保険会社には、代理店の教育・管理・指導を義務付けています。つまり、教育・指導は便宜供与ではなく、保険会社の義務です。今後は個別指導や支援がなくなり、代理店研修会などの一方通行の説明が中心になる可能性があります。その結果、代理店さんは、自ら学び、自ら整える力が求められます。
5.代理店監査に備える
代理店監査・点検に備えるには、次の3点が最も重要です。
① 自己点検の精度を高める
〇 自社の課題を正しく把握
〇 課題に対して解決策を講じる
〇 実行し、記録し、保管する
記録は「証跡」であり、監査の最重要資料になります。
② 課題管理をバラバラにしない
〇 担当者任せにせず、経営者が確認する
〇 課題毎に散らばらないように、経営者が保管場所を管理する
〇 社内の整理・統合が必須
③ 経営者が体制整備の最終責任者であることを自覚する
〇 自立した代理店経営が求められる時代
〇 代理店監査は経営者の姿勢を見ている
〇 自社の改善力が評価制度に直結する
<まとめ>
〇 代理店監査は支援ではなく確認
〇 課題解決は代理店自身が行う
〇 代理店監査と評価制度は別物
〇 営業部署は便宜供与に過敏になり、個別支援は減少
〇 自己点検の精度が監査対策のすべての土台
〇 経営者が主導して体制整備を行うことが必須
代理店監査は、代理店の弱点を見つける場ではなく、代理店が自立した経営体として成長するための入口に相当します。誤解することなく、適切な準備を行いましょう。弊社では、自己点検の精度向上や代理店監査への対応、代理店業務品質評価制度への準備などのご支援をしております。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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