生成AIの普及により、保険会社が代理店の自己点検結果をAIで判定するようになりました。AIは便利で、一定の効率化にもつながります。しかし最近、弊社のお客様からいただくご相談の中に、「AI判定に違和感がある」という声がありました。本日は、コンプライアンスを専門にする立場から、AI判定の構造的な違和感について、課題として整理してみます。本件は、ともすれば、自己点検の本質を揺るがす行為である為、本日は、課題整理のみとし、解決策は次の機会にお届けしたいと思います。
1.回答文章だけで判定する構造的限界
AIは、自己点検の回答を次のような観点で読み取ります。
〇 文章の構造
〇 文書化の有無(記録の有無)
〇 表現の丁寧さ(言葉の適正さ)
〇 記述の長さ(余計な言葉が判定を変える)
〇 用語の統一性(異なる言葉を使うと判定が変わる)
つまり、実態の運用や記録の整合性、代理店の規模、現場の状況といった、本来見るべき部分は、AIには判断できません。そのため、次のような現象が起こります。
〇 実務が整っていても、文章が簡潔だと不適正
〇 実施記録が保管と書いていないと、記録保管なしとして不適正
〇 小規模代理店の実態が考慮されない(全て大規模代理店に必須の要素で判定される)
〇 同じ内容が重複して指摘される
〇 実態よりも、言葉や文章の適切さで評価される
これは、拝見した自己点検結果に、明確に表れていました。
2.最も大きな違和感
ここが今日の核心です。保険会社は、コンプライアンス項目を最重要領域として扱っています。そのため、コンプライアンス項目が1つでも不適正になると、年度末付けで代理店委託解除もしくは、保険会社の子会社代理店への契約移管の要請といった対応が行われるケースがあると聞きます。しかし、その不適正は本当に実態を反映しているのでしょうか。お客様の代理店さんから拝見した書面を見る限り、以下のような傾向がありました。
〇 保険会社の研修システム内の受講記録保管に加え、代理店にも保管がないと不適
〇 保険会社と損保協会の両方の研修の受講を求めている
〇 実務の運用が適切であっても、回答文言が下手だと不適
拝見した限りでは、AI判定が「補助」ではなく「最終判断」になってしまっている構造に、強い違和感を感じました。
3.代理店経営への影響
AI判定の誤判定は、代理店経営に直接影響します。
〇 小規模代理店ほど文章整備力や専門用語の使い方が弱く、AI判定で不利になる
〇 実態が整っていても、文章力や伝える力が弱いと不適正になる
〇 不適正がコンプライアンス項目であれば、委託解除の引き金になり得る
〇 AI判定が誤っているのに、代理店が不当に追い詰められる
〇 自己点検の本質である、実態把握 → 課題認識 → 改善のサイクルが損なわれる
これは、代理店経営の安定性に直結する重大な問題です。
4.この違和感を共有する理由
弊社は、コンプライアンスを事業としており、コンプライアンス項目の重要性は十分理解しています。しかし、AI判定が構造的に誤っている場合、自己点検を適切に実施した代理店さんが不適正とされることは防ぎたい。これはコンプライアンスの本質である「公正・妥当・適正な評価」を守るための問題提起です。本日は、感じた違和感の整理に留めます。次の機会には、AI判定を不適正にしないための総論(文章整備の方向性)について、整理したいと思います。各論、言い換えれば、具体的な書き方・改善計画書の整備などの詳細については、ご相談ベースで対応いたします。
<まとめ>
〇 AI判定は、文章や専門用語だけを見て判定
〇 書かれた実態までは判定してない
〇 コンプライアンス項目が不適正になると委託解除の対象になる
〇 専門家として、この構造には強い違和感がある
本日は、自己点検の判定の実務で起きている構造的な課題について、問題提起に留めました。代理店の皆様の経営判断に、少しでもお役に立ては、幸甚に存じます。なお、本日のブログが、保険会社の方々にも課題認識をお持ちいただく機会になることを期待します。最後までお読みいただき、ありがとうございました。



コメント