最近、目にする広告の中に、AIによって作られたと思われる映像や音声が増えてきました。技術の進歩には驚かされますが、その一方で気になることもあります。本日は、AI広告の進化が、企業の信頼や誠実さに与える影響について、考えてみたいと思います。
AIで作られた映像を見ると、人間との違いに気付くことがあります。表情や視線、身体の動きにどこか不自然さがあり、「AIらしさ」が残っているからです。しかし音声となると話は別です。最近のAI音声技術は非常に高度で、事前に知らされなければ人間との違いが分からない場合もあります。特に有名人の特徴的な話し方や声色になると、多くの人が本人だと思ってしまう可能性があります。技術の進歩は、人間とAIの境界を急速に曖昧にしつつあります。
私は、AIによる広告や宣伝を否定するつもりはありません。企業活動において、新しい技術を活用することは自然な流れです。しかし重要なのは、どのような目的で使われるかです。もし受け手に対して誤解や錯覚を与えることを前提に表現が設計されているのであれば、それは単なる技術活用の問題ではなくなります。広告は注目を集めるために存在しますが、本来は顧客との信頼関係の上に成立するコミュニケーションでもあるからです。
コンプライアンスという言葉を聞くと、多くの人は法律や規則を思い浮かべます。もちろんそれも重要です。しかし、企業に求められるのは、法令遵守だけではありません。社会から信頼される行動を取り続けることも、コンプライアンスの重要な要素です。法律に違反していなければよいという発想では、長期的な信頼は築けません。お客様が誤認することを承知しながら行われる宣伝活動は、たとえ法的な問題がなくても、誠実な事業活動として受け止められない場合があります。
AIによる映像や音声の技術は、これからも進歩し続けるでしょう。映像も音声も、いずれ見分けがつかなくなるかもしれません。しかし、企業が目指すべきものは、「どれだけ本物らしく見せられるか」ではないと私は思います。大切なのは、お客様や一般社会との信頼関係を損なわないことです。便利な技術を活用しながらも、相手を尊重し、不必要な誤解を招かない配慮を続けること。その姿勢こそが、AI時代の企業価値を左右するのではないでしょうか。
私がAIによる広告や宣伝を制作する立場であれば、画面の一角に「この映像はAI技術を利用して作成しています」といった表示を入れると思います。これは法的な義務があるからではなく、お客様に正しくお伝えし、企業としての誠実な姿勢を示すためです。
AIは、これからの広告や宣伝のあり方を大きく変えていくでしょう。しかし、どれほど技術が進歩しても変わらないものがあります。それは、お客様と一般社会の信頼を大切にするという企業の基本姿勢です。AI時代に問われているのは、技術の巧みさだけではありません。その技術をどのような考え方で使うのかという、企業の誠実さそのものではないかと思います。



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