金融庁は、生命保険会社1社に対して、業務改善命令を発出した。認可停止と業務停止に次ぐ、重い行政処分です。金融庁が公表した内容を解釈してみました。
各社に対し、保険本来の趣旨に逸脱する恐れのある契約の調査をさせた間、法人契約を個人契約に名義変更を行うことで節税商品として開発する旨、取締役会に諮っていた。加えて旧経営陣がそれを推進する発言を行い、ガバナンス担当役員は販売好調の報告を受け、販売を黙認・看過していたようです。
金融庁は、3ラインディフェンス体制を求めています。開発推進・営業・保険金支払のファーストライン、内部統制リスク管理のセカンドライン、監査のサードラインです。ファーストラインが法令や倫理に反する行為をしないよう、セカンドラインがけん制し、サードラインが実態把握する仕組みです。
各社は、保険本来の趣旨に逸脱する恐れのある契約があれば、契約者に説明したうえで、契約の無効・取消などの対応を行い、改めて内部統制を見直して、法人向け節税商品として販売しないと徹底しました。これは、保険会社にとって「一次災害」ですが、これ自体では行政処分は受けません。
しかし、法人向け節税商品の販売停止を徹底する代わりに、法令の抜け道を見つけて商品化した点が「二次災害」となりました。たとえ、ファーストラインが商品化をしたとしても、セカンドラインが商品化を止めたり、販売実績に対しけん制していれば、行政処分に至らなかったと思われます。
保険本来の趣旨に逸脱する恐れのある契約調査の指示を受けた際、トップがその目的と趣旨について理解していないのが、直接の原因のようです。目的と趣旨を理解していれば、逸脱していた契約に対する対応を検討する際、個人契約に名義変更するなどという抜け道を思考することはなかったはずです。
これを機に、3ラインの役割の見直しを行い、抜け道営業戦略は通用しないと肝に銘じる必要があると思いました。(画像は東洋経済オンラインより引用)



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