無断で仕様変更

greyscale photography of car engine

大手電機モーターの子会社にて、顧客と取り決めた空調機器の仕様を無断で変更していたことが明らかになりました。顧客には、仕様書にポリウレタン銅線を使用すると説明し、実際は銅グラッドアルミ線へ変更していたそうです。本日は、顧客を騙して利益を出す行為について、考えてみます。

次年度から銅グラッドアルミ線を使用すると検討していた矢先、幹部が「直ぐに使え」と押し切ったそうです。電機製品の材料を変更することは、品質・性能に影響があることから、製造業では、より慎重に検証を重ねて、安全性と価格を精査したうえで、顧客に説明を行います。

今回は、顧客へ提出した仕様書と異なる品質の製品を提供したことが最大の問題です。なぜ、顧客を欺いてまで製品を提供したのでしょうか。それを掘り下げることが、真因分析となり、適切な解決策を見出すことができます。

真因分析を怠り、品質不正を再発しない企業努力だけで乗り切ろうとすると、真因を除去していないことから、更に深い問題が生じるとともに、不祥事に適切に対応できなかった企業として、社会の信頼を失い、ブランド価値は失墜し、場合によっては市場から排除されるかも知れません。

記事には、当該企業の親会社の体質を象徴的に表すものだったことが浮かび上がったと書いています。仮に、その要素があったとしても、製造現場が無断変更に反対したのに、それを押し切らざるを得なかった幹部の心のうちを確認しないと、真因分析はできません。

当該幹部が、大事故さえ起きないならば、次年度製品の変更までの間だけなら、問題ないと考えたのか、その結果、利益の前倒しが可能となり、自社業績に貢献できると考えたのか、親会社から当期利益を最大にする施策を実施する指示があったのか、想像だけでは、真因にたどり着けません。

このケースでは、部下が反対したのに「直ぐ使え」と指示した幹部に対し、直ぐに使うことを正当化した理由や根拠を掘り下げて質問するべきです。顧客に知らせずに仕様書と異なる製品を納入することを正当化するには、強い根拠や圧力があったはずです。まして、顧客は一流企業ばかりです。

不祥事が起こったら、事実関係を詳細に確認することが何よりの解決策です。社員研修、改善プランの策定、社内への徹底などを中心に再発防止策を組み立てる企業が多いようですが、真因と異なる解決策は、的外れになりますので、無駄な労力になり、結果的に利益を損ねる取組みになります。

そうならないように、真因の分析は、社内の第三者、例えば監査部やコンプライアンス部の指示のもと行うなど、社外の眼から離れた独立部署による調査を行う体制を持っておくことが良いと思われます。

このような不祥事においても、本当に必要な調査は、案外と行われていないものなのです。大企業が正しいことをするとは限らないということは、覚えておきたいものです

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