不正行為やハラスメントに対する対応方針は、各企業により異なります。本日は、各担当部署の進め方について、整理して考えてみたいと思います。
不正行為は、行為者本人に自覚があり、多くの場合、行為の結果を理解しています。本人には行為に対する動機が必ずあり、実行するだけに必要な環境と機会があります。その行為も止む無しと本人が思い込む環境や意思が働き、成功すると繰り返してしまうことがあります。
ハラスメントは、行為者本人に自覚がないことが多く、動機はありません。ハラスメントが起こる環境と機会があり、その場において、受け手がハラスメントだと感じる環境や感情があります。
不正行為の解明は、行為者本人の供述をもとに裏付けしますが、協力が得られない場合は、証言や記録などを活用して事実を推測します。行為の全容を把握し、被害内容、被害者の広がりを精緻に確認します。被害規模が把握できない時や決算に影響が生じる場合は、対外公表を行います。
ハラスメントの解明は、受け手の主張を行為者に伝えて、どの行為がハラスメントに該当したのかを知らしめます。受け手には、どんなきっかけでハラスメントを感じたのか、聞ける範囲内で確認します。繰り返し同じハラスメントを受けた場合、受け手が思い出したくないケースもあり、全容解明できないこともあります。行為者が代表取締役でない限りは、対外公表は行いません。
上記のとおり、不正行為とハラスメントは、特徴が異なります。不正行為者には厳しく接し、全容解明して処分を行ったとしても、被害があれば、原状回復するまで終わりません。一方、ハラスメントは受け手の感情を行為者に理解させることで、解明と再発防止策を同時に実施できます。行為者が受け手の心理を理解できたら、謝罪を行う機会を設けることが必要です。不正行為と異なり、調査担当部署は、行為者がすべき事後措置につき、丁寧にアドバイスを行う必要があります。
不正行為とハラスメントの調査を同じ部署が行う場合、対応の使い分けをしておかないと、ハラスメント行為者が不正行為と咎められていると勘違いしてしまい、心理的に追い込まれて、二次災害に発展することがあります。
どちらの調査においても、行為者本人は、調査期間中は原則的に出勤させて、職場とは異なるフロアで面談するなどの対応が相応しいと思います。担当部署は一人に担当させずに、チームでフォローしていくと、間違いが起こりにくい対応になると思います。
どちらも企業にとっては良くないことではありますが、不正行為の場合は、企業が説明責任を果たすことで、信頼回復への道のりが始まります。一方、ハラスメントの場合は、被害者が自社従業員である場合も多く、事柄によっては被害者の感情に影響されることから、行為の認定以降は、被害者と加害者の業務復帰に向けて、企業努力を見せることで管理責任を果たす必要があります。



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