新年度が近づいてくると、各社コンプライアンス年度計画を策定する季節になります。本日は、年度計画を策定するにあたり、大切なことについて、昨今の環境を踏まえて、考えてみます。
最もフォーカスすべきは、企業の存続に影響を与えるリスク要因です。言い換えれば、企業理念や経営理念に反する事業活動を行ってしまうリスクです。不適切な商慣習、認可や規制に反する事象、不誠実だが過去にトラブルがない事象などについて、フォーカスする必要があります。
加えて、社内では気づいていないが、世間一般から見れば異常な事象がないかという観点です。企業には、社内では習慣でも社外から見れば違和感のある事象が数多くあります。そうした事象は、通常の事業活動では見つけにくく、たとえフォーカスできても、売上、収益、人員増、コスト、顧客対応などの理由から、改善しにくい環境にあるからです。
昨今、特に重視したいのは、金融なら、マネーローンダリングや金員詐取・詐欺行為、製造業なら、製造に関わる認可や認証と出荷する製品・半製品との品質格差、サービス業なら、昨今の値上げブームに乗じた下請け企業との商慣習、リベート行為、価格見直しの過程、ハラスメントなどです。
また、コロナとの共存が定着してきたことから、社内承認システムの形骸化、営業活動費、システム開発費、永年に亘り見直しが行われていない社内ルールなどは、年度計画に見直しを行う業務を盛り込んでおくことも有効です。たとえ積み残しとなっても、次年度計画で優先順位が上がり、経営トップの課題認識になるからです。
年度計画では、従業員向けの研修が大半になっている企業がありますが、研修内容を覚えていることは困難なうえに、事業活動の中で研修内容を思い出す機会が多いとは思えません。研修や教育が良くないのではなく、その目的や到達目標が、コンプライアンス年度計画に叶う必要があります。
年度契約を策定するにあたり、企業理念や経営理念を振り返り、数多くの社内の意見に耳を傾け、対岸の火事となった事象や事件を分析し、年度計画の承認を行うプロセスが大切です。担当役員や責任者に指示する際、観点や考え方を示して、共感を得たうえで検討を開始すると良いと思います。



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