比例区選出の参議院議員が辞職しました。繰り上げ当選ルールにより、同政党の次点議員が繰り上げ当選します。その際、当該政党の代表が、残りの期間中に毎年辞職させて、毎年異なる落選議員を繰り上げ当選させる方向性を示しました。ルール上は、問題ありませんが、この方向性に違和感を感じる人が多いと報道されました。
我々が投票する際、その候補者が議員の任期を全うすることを前提にして、投票しています。これは、暗黙の了解であり、日本の未来を政治に託すという国会議員選出の趣旨からすると、当然のことです。しかし、比例選挙は、候補者と政党の両面の性格を持っていますので、議員が辞職すると、同じ政党の次点候補者が繰り上げ当選することで、政党間の議員数を確保することがルール化されています。
繰り上げ当選した議員が、何らかのアクシデントにより辞職すれば、次の繰り上げが行われます。仮に毎年辞職すれば、その都度、繰り上げ当選が行われます。そうなれば、当該政党の代表が示した方向性どおりになります。しかし、その為には、投票者に対して、当選した候補者が1年後に辞職することに同意を求めておく必要があります。
法令等の範囲内であれば、構わないというのは法令上の考え方です。一方、法令の範囲内であっても、法令の趣旨にそぐわない、または社会の要請の範囲内しか許されないのが、コンプライアンス上の考え方です。
今回の議員辞職を契機に、選挙の趣旨を再確認できたことは、ありがたいことです。また、比例区は政党選挙であり、候補者は二の次という側面が明確化しました。党の代表の命を受けて議員辞職することの是非について、考える必要もあります。今後、比例区選挙制度の改革が求められるかも知れません。そういう意味では、当該政党の代表が示した方向性は、法案の提出と同じ価値があると感じました。



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