社有物の無断売却

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ネットワークコンテンツやゲーム製造を主力事業とする企業において、元従業員が、会社のモバイル端末4,400台を無断で売却し、総額は7年間で6億円の売却益を着服していた旨、ニュースリリースがありました。本日は、当該事件を通じて、企業の目の付け所につき、考えてみます。

タイトルは「元従業員による不正行為と同人に対する訴訟提起のお知らせ」でした。「元従業員による不正行為」だけで十分です。訴訟提起は、着服金が回収できない場合の対応ですから、回収可否が確定する前に公表はできません。また、決算への影響が軽微なら、その旨を記載することで足ります。

ニュースリリースに必要な項目は、概要、発生原因、再発防止策、他にも同種の行為がないか、被害者や情報提供者からの通報依頼、今後の進め方、決算への影響の有無です。ホームページへ掲載するので、読み手はステークホルダー、報道機関、取引先、顧客と思いがちですが、実際はリリース文面を基にして、報道機関が報道した結果、多くの一般人の目に触れることを意識すべきです。

概要は、公表可能な範囲で、できるだけ詳細に記載します。発生原因分析が未了の場合は、「現時点では〇〇であるが引き続き調査中」とし、再発防止策は「社内への開示や注意喚起、管理職向けの指示は実施済であるが、追加すべき再発防止策がないか、検討中」で十分です。

自社を被害者側の立場にし、被害の修復と処分を優先して、早期に事件の幕引きを図ろうとする企業が多いと見受けます。しかし、ニュースリリースでは、ニュースの読み手が、当該企業の対応に注目しています。早期に幕引きを図ろうとしていると誤解を受けることは、避けねばなりません。

また、事件の全容解明がなされないまま、関係者や役員の処分を行うと、更なる被害者が出た場合、処分の追加を行うのは、不自然で違和感があるとともに、安易な幕引きを図ったと誤解を受ける可能性があります。「関係者等に対する処分については、全容解明後に社内規則に則して行う予定」と記載することで足ります。減俸の事実を伝えたいなら「減俸〇か月」より、「実額〇〇万円の減俸」の方が、重い処罰と伝わりますが、そもそも役員個人に対する処分を開示することは、お薦めしません。

ニュースリリース、特に不祥事の場合、初動対応が迅速で、被害者への対応が誠実である、全容解明に向けて真摯に進めている、発生原因に対して再発防止策を講じていることが伝われば、企業の社会的な役割は果たしていると思います。ニュースリリースで良い子になる必要はないと思います。

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