電力大手社が、競合関係にある新電力会社の顧客情報を不正に閲覧していました。経産省は、当該電力大手社に対し、緊急指示を行いました。本日は、本事件を起こした原因について、考えてみます。
電力会社では、契約者名や電力使用量などの顧客情報を送配電子会社へ集約して管理しています。送配電子会社は、大手電力会社の子会社です。大手電力社は、送配電子会社に付与されているIDとパスワードを入手して顧客情報を閲覧し、当該顧客に対して、特に安い料金を提案して、自社へ取り戻す営業活動を行いました。直近9か月間に、35名の従業員が4千件以上閲覧し、自社の営業活動を行って、50件近くを自社へ取り戻しました。
電気事業法では、自由競争を妨げる情報の共有を親会社と行うことを禁止しています。大手電力社の従業員レベルであれば、子会社のIDやパスワードの入手や、顧客情報の閲覧禁止は知っています。更に、顧客情報を利用して営業活動を行えば、電気事業法違反に加え、独占禁止法に抵触する可能性が高いことも知っています。それゆえ、コンプラ意識が不十分という原因分析は、間違っています。
当該電力大手社には、以下の原因があります。
1.子会社との間で、ファイアーウォールの仕組みがない、または機能していない
2.顧客情報を入手した従業員がいても、上司が営業活動の許可を出せない仕組みがない
3.悪事を働く前に、誰かに相談する環境がない
4.悪事を見逃さずに、内通する社内風土がない
上記の体制を整備していれば、未然に防げたばかりか、早期発見も可能だったはずです。こともあろうに、大手電力会社の多くが、大なり小なり同じ行為を繰り返した模様であり、報告徴求命令して業界として自浄作用で全容解明を行い、経産省からの処分を受け、社会に対して謝罪ならびに説明を行う責任を果たさなければ、なりません。
こういう大事件が起こる前に、他社で起こった事象を自社に置き換えて、社内外にリスクがないか、未然防止や早期発見する仕組みがあり、機能しているかを確認することこそ、コンプライアンス経営を行う企業が、すべき対応だと思います。



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