県の条例では、連日使用する循環浴槽は週1回全てのお湯を入れ替え、残留塩素濃度を一定以上に保つことを求めていました。老舗温泉が、これに違反していたことが判明し、社長が釈明会見を行いました。本日は、自社の常識が社会の非常識の場合における企業リスクについて、考えてみます。
同社社長は、温泉に繁殖するレジオネラ菌が、大した菌ではないという先入観を持っていたそうです。加えて、社長が塩素のにおいが体質に合わないことを理由に、塩素による消毒も怠っていました。従業員が、塩素は入れておいた方が良いと進言しましたが、聞き入れませんでした。
社長は温泉業の経営者ですから、条例の趣旨は知っています。しかし、お湯の入替や塩素注入を怠っても何も起こらなかったことで、条例違反の意識が薄まり、条例を守らなくとも、自社ルールで管理すれば問題ないと、認識するようになります。これが、最近の企業不祥事に多い、常態化リスクです。
常態化リスクとは、業務プロセスや商慣習などが適切ではないと認識しながら、アクシデントが起こらなければ、自社の行いは間違いではない、またはルールや法令が重篤過ぎると誤解した結果、突然に指摘を受けたり、アクシデントが発生して初めて、事の重大性に気付くリスクです。
常態化リスクに陥らない為に、気を付けるべき点としては、以下のようなことが考えられます。
1.社内、取引先、お客様から受けたご意見を自身が否定した場合、第三者に確認する習慣を付ける。
2.定期的に業務プロセスや商慣習を見直す機会を設ける。
3.社内監査の報告事項に、自社の常識が社会の非常識になっている点を入れる。
4.他社で不祥事が発生したら、自社でも同種の行為や習慣がないか確認し、改善する習慣を付ける。
5.社長の常識(自社の常識)は、必ずしも社会の常識でない可能性があることを周知しておく。
一般的に、管理職は、常態化リスクに対して弱い側面があります。中小企業ではオーナー社長に逆らえない、大企業では上司や部下との間に何でも相談しやすい環境が整っていないことが、常態化リスクをもたらす要因になります。
企業のリスクマネジメントとは、こういう些細なことに怠らない仕組み作りや風土を醸成することが求められます。弊社では、社外の立場でご相談を受けますが、常態化リスクらしき兆候があれば、その旨をお伝えするようにしています。常態化リスクを認識しましょう。



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