事件や事故を活かす

boats floating on canal in old town

川下り観光船が転覆して、船頭2名が亡くなり、乗客7名が軽いケガをした事故が発生しました。亡くなった方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。本日は、「事件や事故を活かす」と言う考え方について、お話します。

コンプライアンス経営の観点では、他山の石と言う考え方を使います。他山の石とは、中国最古の詩集「詩経」にある故事に由来します。「よその山から出た粗悪な石も自分の宝石を磨くのに利用できる」ことから「他人のつまらぬ言行も自分の人格を育てる助けとなる」という意味です。

昨年4月、知床観光船が沈没し、悲惨な結果をもたらしました。今年の4月末から運航を再開する予定で再発防止策を検討し、大部分は実施しています。航行危険なエリアの情報共有、天候など自然環境の変化に伴う安全対策、通信機器の確保、ドライスーツ着用による水温対策などです。

川下り観光船の運営企業も、業態は同じですから、コンプライアンス経営を実践していれば、事故を防ぐ対策を検討、実施していたはずです。しかし、報道を見る限り、被害に遭われたお客様の誘導など有益な対応を行った部分がある一方、通信手段の確保、救命胴衣の着用徹底、事故発生時の対応マニュアル、非常時対策訓練などは、十分でなかった模様です。

自然を相手に事業を営んでいれば、自然の猛威に手も足も出ないことは、あり得ます。事故や事件には、未然防止、早期発見、事後対応と言うカテゴリーがあります。自然の猛威に手も足も出ないケースを想定して、カテゴリーごとに、お客様に安全と安心を届ける為に、何かできることはないか、考えることが必要です。考えた内容ならびに結果について記録しておくことも大切です。それは、次回検討するにあたり、前回の考え方を理解したうえで、環境変化がないか、更に良い見直しができないかなど、レベルアップできるからです。

観光船の場合、転覆する恐れがあるから、4名も船頭が乗っている訳です。仮に、4名の他に観光ガイド役として、船頭の技量を持つ従業員1名が乗船していたら、どうだったでしょうか。船頭を1名増やせば、人件費は25%アップして経営に大きな影響があるでしょう。しかし、そう考えることで、1名増やす代わりの案を検討し実施することも可能になります。

通信手段がなければ、船頭に非常ベルや通報機器を携帯させたり、スマホが圏外になる地区の両岸に非常通報ボタンを設置するなど、検討材料を出し尽くすことが、大切です。安心と安全は、事業の運営にとって、何よりも欠かせないことだからです。

今回の観光船事故により、日本中の観光船、観光業界が、他山の石と言う考え方を活用し、自社の運営状況や非常時対応などについて、再度考え直して欲しいと思います。弊社では、そういった自社運営の見直しを行うにあたり、進めるべき考え方や、優先順位などについても、ご相談を承っています。社内にいると、つい見落としがちな点や、考え直す目的を正しく認識できなかったりします。社外の相談役として、ご活用ください。

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