通販会社の倉庫内で作業をしていた段ボール回収業者がフォークリフトの作業中に、段ボールなどがエンジン部分に入ったため、高温の排気管に触れて着火して、倉庫の大部分を焼失する火災がありました。通販会社が起こした訴訟の判決があり、段ボール業者に対し、約50億円の賠償を命じました。
幼稚園で道具箱を片付けていた園児と、遊戯室から走ってきた園児が衝突して、目に後遺症が残った事故がありました。園児側が起こした訴訟の判決があり、約2,000万円の賠償を命じました。
この二つの事故の判決に共通していたのは、「災いを予見できた」と認定されたことです。本日は、災いの予見について、考えてみます。
火災事故においては、フォークリフトの排気管付近に燃えやすいものがあれば、火災の可能性があると説明書に記載されていたと指摘しました。
幼稚園児の衝突事故においては、道具箱が遊戯室から死角になる場所に置かれていたことにより、不意に衝突する事故が発生する危険性は、十分認められると指摘しました。いずれの指摘も、今となればごもっともだと思います。
事前に予見するには、コンプライアンスの取組みにおいて、起こり得る事故や事件を数多く想定することが大切です。その為には、事業を構築する業務フローや点検・監査・けん制の仕組みの有無などを第三者の立場で中立に確認していくことができる部門が必要です。
企業規模により、専門部署がない場合には、第三者の立場で中立に確認する役割を付与することです。経営トップから直接役割を付与して、役割とその目的を理解させれば、必ずしも専門部署でなくとも機能します。
業務フローや点検・監査・けん制の仕組みの有無を確認するには、企業の事業の大まかな事業構図を理解する必要があります。悪事を見つけるのではなく、事業が健全に運営できない場合に、それを未然に防ぐ仕組みやけん制の仕組み、事件や事故が生じた場合に失う損失の大小、それを補完できる保険などの補償の加入有無などを確認することです。
企業全体を俯瞰して見つめることだけに、片手間で行わないように、経営トップから直接役割を付与と申し上げた次第です。



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