メガネ代の過大請求

black framed eyeglasses on black surface

生活保護受給者が、メガネの現物支給を受けられる制度を悪用し、多店舗展開しているメガネ販売店が、自治体へ定価より過大な請求をしていた事件が報道されました。少なくとも3店舗において22件だそうです。本日は、企業従業員が行う不正な請求について、考えてみます。

専用の申請書類を記入し、病院で診断を受けた上で販売店で選び、書類を販売店へ提出します。販売店は金額を記入して自治体へ送り、自治体が受理すると、販売店が商品をお客様へ手交し、自治体から代金が振り込まれる仕組みです。

生活保護受給者が来店して商品を選ばないと行為の機会がないので、積極的な詐取でないと思われる一方、過大請求した3店舗の間で手口を共有したのではないか、と疑いたくなります。追加調査の結果、実態は確認できると思われます。

不正行為には、必ず動機があり、行う機会があります。加えて、行為者が当該行為を正当化して考えると、不正行為が始まります。一度成功すると成功体験が加わり、多くの場合は繰り返すことで、大きな事件に発展します。

恐らく初回は、割引販売したのに、誤って定価で請求して定価支払いを受けたかも知れません。同じ商品で利益額が大きくなるなら、意図的に誤って定価で記載しようとする動機ができます。問合せを受けても、誤って定価を記入したと言えば良いと、自分を正当化してしまいます。

動機、機会、正当化の全てが揃うと、不正行為は止められません。定価の誤記入が、定価より大きい金額の誤記入へ変わり、生活保護受給者が訪れる機会を増やそうと、考えたかも知れません。これは推測ですが、多くの金員詐取や不正な請求の行為者行動に沿って考えています。

企業としては、自治体への送付は専門部署が行う仕組みにすることで対策ができます。専門部署なら、誤記入をしないように、確認とけん制が可能です。誤記入があっても、未然に防ぐことで、意図性のない行為にも対応できます。

本件により、企業が社会からの信頼を失うコストと、専門部署を新設するコストとの兼ね合いで判断することになります。更に少ないコストで不正が起こりにくい環境を整えることができれば、ベターな選択を行うでしょう。

事件概要を社内へ通知して研修等で、禁止行為として習得させるだけの対策では、再発します。なぜなら、本件の動機となる「誤記載」は意図的ではないから、大丈夫と考えるからです。不正行為に対する対策は、動機、機会、正当化の要素が揃わない仕組み作りに尽きると思います。

コメント