大手生命保険会社の元営業部長が、「自分は社内成績優秀者なので、従業員向け高利回り保険商品を顧客へ推薦することができる」と噓をつき、架空契約を締結して4年間に亘り、少なくとも1.4億円の保険料を詐取していた旨、報道がありました。生命保険会社固有の品質管理の甘さが原因と思われます。本日は、この問題について、考えてみます。
生命保険は、営業職員の品質管理が甘い業界です。どこで誰と会っているか、その際、どんな提案をしたかなどのデータを保管しているのに、管理していません。加えて、成績優秀者に対する表彰や待遇向上などの「えこひいき」が多く、その待遇差が大きいことです。
要すれば、管理者は数字の管理はしていても、品質の管理を怠っていることが、真因です。例えば、営業部長の呼称を持つ人の家族構成、資産内容、顧客層、性格などを知る管理者がいません。普通の企業なら、最優秀の社員について管理者が知らないのは、非常識です。
また、成果報酬型給与が多いです。基本給は少ないまたは無い場合が多く、成績に大きく左右される給与体系です。それゆえ、社会の常識では、お金に困った成績優秀な営業職員などいるはずもない訳ですが、なぜかこの手の事件を起こす人は、このパターンです。
成績優秀者がお金に困る原因の多くは、保険料の手出し(負担)の常習化と推測しています。月10件の新規契約で成績優秀者とすれば、1件足りない時、自分で保険料を支払って穴埋めすれば足ります。管理者が、この行為を見て見ぬふりをしているのではないかと思う次第です。
また、成績優秀者の顧客には、管理者は何もアプローチできません。成績優秀者は自分の顧客を上司や他人に触れさせないからです。顧客と直接に接点がないと、不正行為をして顧客が気づいたとしても、営業職員が丸め込めます。管理者や支社との接触があれば、顧客が発覚行動を取るのですが、それも叶わない構造にしています。その結果、生保営業職員が起こす詐取事件は、長期間に亘り、金額が大きくなります。
この2つの要素に対する対策は、明確です。一つは、成績優秀者には、パソコンの利用データの分析を行い、普通の営業職員との差が大きいなど、異常値があれば、本社から監査を行う、支社から顧客へ直接接触する、同行募集を行うなど対策を講じる仕組みを取り入れることです。これは全営業職員に対して行えば、優秀者の特性や、平均以下の方の行為特性なども分かり、営業対策にもなり得ます。
もう一つは、管理者に対し、成績優秀者のみ情報収集を行わせることです。管理者とて人間ですから、ウソを記載することもあり得るので、定期的にコンプラ担当がヒアリングを行うなど、管理者の感応度を高める育成を行うことです。
こうした対策を講じない限り、生命保険の営業職員やアドバイザーによる保険料詐取事件は続いていくと考えています。弊社では、このようなご相談にも応じています。お問合せ下さい。



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