企業としての信頼を失う時

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保険金の水増し請求に対し、当該企業は、特別調査委員会による調査報告書について公表しました。しかし、公表まで約1か月経過したこと、調査報告書の詳細については触れていないことが、報道されました。本日は、本件について、考えてみます。

一般的には、特別委員会による調査報告書は、調査報告書を受け取り、取締役会にて報告を受けた直後に公表します。そのまま公表することで、事実を隠ぺいする意図がないこと、企業としての誠実さがあることを説明できます。

水増し請求は、連係ミスや人的ミスであり、意図性はないと当該企業は説明していましたが、全33工場で水増し疑義があり、工場長からの指示で行われたと報告されました。役員をはじめとした本社サイドが各工場に過度な営業ノルマ(粗利)を課し、現場の社員たちが水増し請求に手を染めざるを得ないような状況に陥らせていた側面があると断定しているそうです。それゆえ、適切な営業目標の設定や経営責任の所在の明確化などを求めています。

本来は、自社の認識が誤りであったことを認めて、調査報告書を厳粛に受け止め、現場の工場だけの問題とは整理しないで、役員を始めとした本社サイドを含めた会社全体の問題であると説明すべきでした。加えて、被害の全容解明と被害者救済のため、保険会社任せにしないで全容解明に全面的に協力すると、宣言すべきでした。

この対応の差は、社会規範に反する行為と指摘を受けた際に、企業が社会に存続できるか否か、言い換えれば社会に許してもらえるか否かを左右します。刑事事件に発展しかねない状況にも拘らず、テレビやラジオで同社CMが流れることにも、違和感を感じます。

「有事の時こそ、企業は、代表者は誠実であれ」ということです。このままでは、社会からの信頼を失います。直ちに追加公表を行い、調査結果を認めて反省すると共に、調査委員会から求められた再発防止策について、済々と取り組むことを説明すると良いと思います。

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