報道されている中古車販売店。旧経営者は退任したものの、新たな疑惑や証言に基づく不正行為の数々は、新経営者は身に覚えもなく、広報や監査部がない企業の為、具体的な調査や説明が、できません。本日は、報道により明らかになってきた内部統制の仕組みと説明責任について、考えてみます。
当該企業の内部統制は、役職者に対し、高額な給与を与える見返りに、利益目標の為なら手段を問わない体制を作り上げました。他の販売店の買収や新規出店により、中古車販売台数を伸ばし、自動的に修理や車検の対象台数も増えて、業容の拡大を進めてきました。
しかし、根拠のない利益目標を継続した為に、努力や運だけでは、目標に遠く及ばず、経営陣は苛立ってきました。そこで、経営陣は、環境点検と言う名の恐怖政治と、LINEグループを悪用した誹謗中傷で、管理職のモラルを崩壊させました。経営計画書では「社長と異なる意見を持つ人は、仕事ができても、退職して下さい」と、ハラスメントや法令違反を容認するかのような記述で、確認できます。
それゆえ、全ての事業活動において、不正を行うことが常習化してしまい、自らの行為に耐えられなかった管理職は退職し、残ったのは、高収入を見返りに、犯罪をも厭わない従業員でした。報道が開始した直後から、現役の従業員から、新たな不正疑惑の証言が出始めたのは、旧経営陣が退任したことにより、従業員自らにも責任が及ぶことを恐れたからです。
中古車販売店には、中古車の仕入れ、店頭販売、ネットオークション、修理、部品販売、車検、クレジット、保険、リースなどの様々な事業活動があります。仮に、全ての事業活動に、同様の高い利益目標が設定されていれば、全事業活動に不正行為が常態化していたとも考えられます。
こうして、広報、監査、内部統制などの社会に対する目線を持つ部署がなく、経営の軸が、旧経営陣の腹積もりと、高い利益目標しかない企業が出来上がったと思われます。
今後表面化すると思われる他の事業活動における不正行為について、新経営陣が社内調査を行い、調査結果を公表し、説明責任を果たすことは、難しいでしょう。不正行為を厭わない従業員を作り上げ、不正行為を常態化させて、高い利益を挙げてきた仕組みを作ったのが旧経営陣であり、株主だからです。
国土交通省、金融庁、都道府県などが動き出しましたが、お互いの連携が上手でない傾向にあります。各事業活動ごとに不正を証明し、資格や認可をはく奪するなどの部分的な行政処分を行うに過ぎない結果に終わると思われます。
この事件は、各企業への警笛です。社訓、経営方針などに不適切な文言がないか、不正を誘発する風土や発言がないか、ハラスメントや法令違反を見逃したり、助長する中間管理職がいないか、従業員の退職理由に異常値がないかなど、自己点検を行うことで、コンプライアンス経営を進めていきましょう。



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