自社ならびに業界の商慣習が、一般社会から見ると非常識に見えることは、どの業界にもあります。コンプライアンス経営において、自社の常識を疑うことは、大切な業務の一つです。本日は、自社の常識が、社会の非常識とみなされるとどうなるかについて、考えてみます。
良くありがちなのが、法人組織なのに、営業マン個人に全権を委ねていて、お客様と会社の関係が薄く、お客様からのご連絡は常に営業マン個人のスマホ入る状態です。営業マンによる不正行為が、早期に発見できないリスク大です。お客様は、営業マンの言い訳や説明を信じてしまい、よほど不審に感じるか、被害に耐えられなくなった時、初めて会社へ連絡してきます。その時は、既に大事件です。
先日、中古車販売店が、店舗前の街路樹は自社に権利があると考えて、除草剤を巻いて街路樹をなくし、道路側から店舗が見やすい環境にしてしまった事件がありました。一般社会では、街路樹は地区町村の所有物であるのは、誰にでも分かることですが、当該企業の常識は異なっていました。
スポーツ部の学生寮で、大麻や覚せい剤らしき錠剤が出てきた際、禁止薬物でないことを祈る幹部が、2週間近く預かり、警察への届出が遅れました。薬物らしければ、直ぐに警察へ連絡するのが社会の常識ですが、学生への指導と、学生との信頼関係を大切にした結果、非常識な行動をしました。
「女性ドライバーが、全員20代でメチャクチャ可愛い」と、自社SNSへ投稿したタクシー会社の事例も、この類に入ります。日頃から、社内でそういう会話があると思われ、この程度の冗談なら構わないとハラスメントのリスクを省みず、SNSへの投稿に繋がったと推察されます。
損害保険会社による企業保険料に対するカルテルの疑いについても、同じ類の緩みだと思います。禁止行為への危機意識の薄れが、営業活動の繁忙度と重なり、止む無き事情が発生して一度だけのつもりが、常態化に繋がったと推測します。
このようなことが起こる理由は、社会の非常識に該当するかを判断する仕組みがない、定期的に業務の見直しを行っていない、非常時の予行演習をしていない、もしくはそこまで切り込んだ予行演習をしていないなどが、考えられます。
この課題を解決するには、内部統制部署や監査部署において、社内外に向けた発信や、商習慣に不備がないかと言う観点でチェックを行うことです。数年に一度の内部監査項目にて、社内の常識が社会の非常識と思われる項目を探し出して、監査します。
その為には、「何か、変だ」「世の中の常識とは異なる」と感じた時に、目安箱のような報告する仕組みを社内作り、定期的に社内情宣を行うことが必要に思います。ハラスメントや不正行為などに対するホットライン部署が、定期的にその使い方などを社内情宣する機会があれば、一緒に宣伝することで、十分ではないかと思います。
自社の常識が社会の非常識であった場合、社会規範に反する行為をみなされる確率が高く、その結果、お客様や社会からの信頼を失い、報道やSNSにおいて、批判や指摘を受けることになります。信頼は、常識のうえに成り立っているからです。



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