芸能事務所の創業者による性加害行為を認めた件につき、テレビ局のコンプライアンス欠如は、目に余るものがあります。コンプライアンス経営と人権尊重の観点で、お話します。
企業には、法令の遵守、就業規程の遵守に加えて、社会規範に反する行為がないことが、事業活動を行う要件です。法令に違反すれば行政処分を受け、就業規程に違反すれば社内処分を受けます。社会規範に反する行為があれば、社会からの制裁を受けます。
今回の芸能事務所における性加害行為事件は、加害者が故人である為、法令違反や社内規程違反には、問えません。しかし、性加害行為は、社会規範に反しています。それゆえ、社会からの制裁を受けることになります。
社会からの制裁とは、報道やSNSによる炎上報道などにより、事業活動に対してマイナス要因が働くことで、売り上げが減少したり、商品やサービスの評判が落ちるなど、企業に対し一定程度のダメージがあります。
本来、今回の芸能事務所は、スポンサー企業の取引停止、テレビ局などによるタレント使用の停止、週刊誌やワイドショーの報道、SNS上における一般消費者からの意見など、社会からの制裁を受けることが想定されています。
しかし、テレビ局は、タレントの一定期間使用停止などの制裁を起こそうとしないばかりか、今後も継続的にタレントを使っていくと公表しています。理由は、その間に他局が停止しなかった場合、当該芸能事務所からの報復を恐れているからと、思われます。
テレビ各局は、各社のホームページにおいて、人権方針やコンプライアンス宣言の中に、人権を尊重して、差別や嫌がらせなどの行為をしない。と公表しています。しかし、それは自社の社内に限ることであり、スポンサー企業、取引先、芸能事務所などのビジネスパートナーには求めていません。要すれば、国際基準と比較すると、緩い基準です。
テレビ業界は、人権に対するコンプライアンスが欠如していると言えます。現在、当該芸能事務所のタレントのCMを停止、または取引停止にしているスポンサー企業の多くは、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」に従う旨、ホームページで公表しています。自社のみならず、ビジネスパートナーにも同様の考え方を期待している、もしくは強いています。
今回の事件を機に、スポンサー各社のコンプライアンス基準や、人権尊重に関する国際基準を見習って、テレビ各社は、人権宣言の内容の見直しを行わないと、今後も同様の事象が起こった際、スポンサー自体がテレビ各社のレベルの低さに気付き、テレビによるコマーシャルや番組提供を控える行動に出ると思われます。危険です。



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