企業に異変が生じる時

grayscale photo of man thinking in front of analog wall clock

世間を騒がす事件や事象を起こす企業に共通するのは、異変が生じた時に、トップが策を講じていないという共通点があります。本日は、企業に異変が生じたことに気付く機会と、その対応について、考えてみます。

世間を騒がす事件や事象を起こした企業には、必ず幾つかの事件や事象が起こっています。ニュースリリースするような事件や事象が起こったら、経営トップは、これは一つの警告で、必ず他にも幾つかの事件や疑わしい事業活動、ハラスメントなどが起こっていると最悪のことを考えることが、有効です。これを一般的には、気づく機会と言い、この能力のことをリスク感応度と呼びます。

気づいたら、何をすれば良いか?それは、「騒ぐ」ことです。経営陣や上級管理職を集めて、発生した事件や事象について、情報を共有します。次に、発生した原因を自由に意見交換させてください。原因は更に深く掘り下げた議論にしてください。法令を守らなかった、言動がおかしかった、怠けていたなどの原因があれば、なぜ守れなかったのか、なぜ言動がおかしくなったのか、それに気づいて対応しなかったのか、なぜ怠けていたのか、怠ける原因となった事象は何かなど、掘り下げ尽くしてください。

掘り下げ尽くしたら、それに対する対策について、意見交換して下さい。怠ける原因となったのが、役職の降格であり、本人の理解が十分でなかったのであれば、人事異動、特に降格になる場合には、本人に理由を丁寧に説明して、納得させてから次の役割へ異動させることが、再発防止策になります。表面的な再発防止策を述べる人がいれば、掘り下げた発生原因への理解が十分でないので、直ぐに否定することなく、理論立てて説明して差し上げてください。

的確な発生原因分析や再発防止策の検討をすることなく、行為者への処分を厳しくするなどの社内向けの脅しを行うほど、正常な従業員に不信感を買います。そして、次の事件や事象が発見されます。そうなると、場当たり的な対応に留めることになり、益々企業は低迷していきます。社会規範に反する企業を思われたら、信頼の復活は容易ではなく、倒産の危機に直面します。

そうならない為に、最初や二番目の事件や事象が起きたら、「トップ自らが騒ぐ」ことが必要です。言い換えれば、非常事態宣言をするという趣旨です。各種会議体の場では、冒頭の挨拶をするはずです。その際、必ず事件や事象の話を継続的にして下さい。調査の途中経過、社会からの見られ方、お客様からのご不満の声でも、何でも構いませんので、マル秘情報も提供して下さい。大げさに言うことなく、事実を淡々と述べ、それに対するご自身の危機感、企業理念や経営理念とかけ離れた企業になりつつある危機感について、お話して下さい。そして、同僚や上司と、この危機感について対話するように促してください。社長は、どう考えているか、それを聞いて、どう感じたか、など社内に広げていくことで、危機感が醸成されます。

上記以外にも、毒を使うやり方があります。それは、一旦停止です。今期は、営業数字や利益を追うことはせずに、社内外における法令違反行為、自社では常識だが世間では非常識な活動、疑わしい事業活動、子供や家族に話すことができないような事業活動などがないか、徹底的に考えさせて報告させてください。過ちや違反行為を申告してきたら、全容を解明して直ぐに正しく直しましょう。痛みが伴うものもあるかも知れませんが、社会から非難を受けるよりはマシです。

このような危機感の醸成と次の事件や事象の発覚を自らの手で行うことができる企業は、良い企業であり、社会から見て適正な業務をしている企業です。恐らく経営理念や企業理念にも近いでしょう。事件や事象を逆手にとって、企業を進化させる経営こそ、コンプライアンス経営です。

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