大手中古車販売店による保険金不正請求事件と、大手鉄道グループ契約におけるカルテル事件が発生しました。この事件に対して、金融庁は、損害保険各社に対して報告徴求を求めたのは、報道の通りです。本日は、なぜ報告徴求が必要なのかについて、考えてみます。
一般的に、報告徴求は、法の根幹を揺るがす事象が発生した際に、発出します。保険業法を揺るがす事象、言い換えれば、法の目的に反する事象の発生です。法の目的とは、保険業の公共性に鑑み、業務の健全で適切な運営と、募集の公正を確保することにより、契約者等の保護を図り、国民生活の安定と国民経済の健全な発展に資することです。
保険金不正請求事件においては、不正に保険金の支払額を大きくしたことにより、業界全体の損害率が高まり、その結果、保険契約者が支払う保険料が、本来より高くなり、募集の公正を確保できなくなり、契約者の保護に欠けるというのが、直接的な要因です。
一方、カルテル事件では、保険会社各社がカルテルを結ぶことで、契約者が、本来より高い保険料を支払うことになることで、募集の公正を確保できなくなり、契約者の保護が図れないと判断したことが、直接の要因です。独占禁止法違反の疑いもあることから、公正取引委員会による調査と並行して行う必要があります。
どの企業においても、ルーティンでこなしている業務フローの中に、「ここまでは、大丈夫だろう」という考えが、少なからず存在します。自社の常識としている商慣習が、他業界や一般社会から見ると、非常識、もしくは違法と疑われることは、あり得るということです。
今後の自社の行く末を案ずる為には、時には、自社の商慣習が法を超えていないか、社内の非常識ではないかという観点で、業務の見直しを行うことも、必要と思われます。こういう話は、決して現場から出てくる発想ではありませんので、経営トップ自らが自分の言葉で説明し、指示を出すくらいしないと、なかなか自社での洗浄はできないようです。



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