幕内力士が、弟弟子に対して暴力行為を行った結果、協会より引退勧告を受け、引退を余儀なくされた旨、報道がありました。本日は、力士のような、パワーのある人によるハラスメント行為について、考えてみます。
一般的にハラスメントは、被害者の受け取り方により判断します。強靭な体を持った若者が被害者ですから、ハラスメントを声を上げる資質には恵まれていないと考えるのが自然かも知れません。それゆえ、角界でのハラスメント感覚は、一般社会のそれとは異なると考えられます。
角界で、暴力事件が後を絶たない理由は、「かわいがり」が残っており、「かわいがり」は暴力だとはっきりと定義していないことが要因かも知れません。また、力士に昇進すると待遇が大きく変わり、それまで同僚だった人が付き人になり、二十歳そこそこの若者が、自分の身分に対して、勘違いを起こす構造を変えられないことも要因ではないでしょうか。
そこで、再発防止策について、考えてみます。一つ目は、パワハラ(含む暴力行為)、セクハラ(含む美人局や詐欺)、社会から見られていること、加害者が受ける処分、相撲界の常識が社会の非常識である事項などについて、研修を行うことが考えられます。
番付編成会議が行われ、新たな力士や横綱、大関、三役が決まる都度、昇格者を集合させて研修するのが、タイミング的にはベストです。不参加者は昇格取消と規定することで、ハラスメント対策の重要性を高めることも必須です。参加者には、行事や関係者も含めるべきでしょう。
二つ目は、早期発見策の推進です。エスカレートする前に、習慣化する前に、被害者を出さない為に、何より早期発見が必要です。親方には隠ぺいの可能性がある為、窓口は、協会のコンプライアンス担当と外部機関に統一します。マニュアルには、その旨を記載し、毎年行う全員研修の際に、繰り返し説明することで、早期発見に繋げる狙いです。
三つ目は、平時のけん制体制を作ることです。部屋稽古日、巡業中、外出中におけるけん制体制が必要です。稽古日に一般客に観覧してもらうことで、見られる機会を設け、暴力行為をけん制します。巡業中は、年寄や関係者が巡回訪問して、けん制することが有効だと思われます。本場所中は、タニマチの皆様にも、ご協力いただくことも良いでしょう。
力士やそれ以上の地位を得るには、多くの時間、稽古、健康、勝ち運などが必要ですが、地位を失うのは一瞬であり、社会的に間違った行為に至ることで失います。前途ある若者が、加害者や被害者になり、角界を去るような事件が続けば、夢見る児童の数が減ります。今一度、対策の練り直しが必要ではないかと考えます。



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