前回は、不適切な事象が発覚した直後に、止血を行う必要性とその範囲について、ご説明しました。本日は、次に対応すべきことについて、考えてみます。
不適切な事象、悩ましい事象が起こり、事象や行為を止めることができたとします。次に対応したいことは、事実解明とその他同様の事象の有無について、調査を行うことです。
事実解明とは、何が起こったのかを客観的に時系列に並べることです。事象には必ず要因と動機があり、人が起こす場合には、加えて機会、行為を正当化する背景があります。事実解明が正しく行われる為には、動機に踏み込んだ調査や審査が必要です。
商品の品質不正がは生じた場合には、結果的に認可と異なる商品を製造したという事実ではなく、認可と異なる製造過程があったのか、小さな計算誤りがそのまま継続したのか、ある時期に気づいたもののオープンにできなかったのか、そういう要因や動機まで解明できると、説明責任が果たせるレベルの対応になります。
また、その他同様の事象がないかを確認する調査も必要です。特殊な環境下に置かれた状態だった、人物の資質に問題がある行為だった、単なる計算誤りや取違えだったなど、抽象的に同種事象を否定する報告は、信じてはなりません。
監査の部署があれば、社内の目線で説明責任が十分かを確認し、法務の部署があれば、顧問弁護士や社内弁護士の意見を聞いて、社会に対して信頼に足りる報告かどうかを判断します。第三者機関に依頼する手法もありますが、その後の信頼回復の為には、できるだけ自社で調査を完結させることが理想的です。
失敗事例としては、ビッグモーター保険金詐取事件に対し、損保ジャパン社が適切な事実解明を怠り、報告書が不十分と当局に指摘を受けた件、創業者による性加害行為に対し、ジャニーズ事務所が他に同様の事象の有無の確認を怠った件です。
その他同様の事象の有無については、必ずしもすべての調査がスムーズに進むとは限りません。商品やサービスの調査であれば、データと結果により概ね適切な調査が可能ですが、人が関与する調査の場合は、隠ぺいや不知発言も想定できるので、最終結果の公表には慎重を期する必要があります。社会に公表する、官庁に報告すると、後から事実と異なる事象があった場合に、信頼を失うことになるからです。
上記の理由により、事実解明とその他同種事象の有無の確認が終わったと判断を行うのは、発生した当事者の部署ではなく、社内で第三者的に俯瞰できる部署の担当役員が行うと良いと思います。



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