金融担当大臣が、企業などの従業員が加入する「団体扱保険」について、価格の調整が行われていなかったかどうか調査を進めていることを明らかにしました。企業向けの保険の保険料を事前に調整していた問題から発展した調査と思われます。本日は、本件について、考えてみます。
損害保険には、危険保険料を各保険会社と比率分担して引き受ける「共同保険」という制度があります。この場合は、事前に同じ商品・約款の認可を取得しているかを分担する他保険会社に確認する必要が生じます。
共同保険契約では、次年度の割引率を決定する為、前年度の損害率を計算する必要があります。引受保険会社が、分母となる引受保険料と分子となる支払保険金を幹事保険会社に提出し、幹事会社が合算して割引率を決める仕組みがあります。
加えて、損害保険には、契約を引き受ける代理店が複数ある場合に、「代理店分担」という制度があります。この場合は、契約者が契約締結以前に代理店分担の割合を決める仕組みになっています。
更に、代理店分担と共同保険の両方を適用する保険契約が、あります。代理店分担を契約する保険会社が、複数ある場合です。やっかいなのは、各代理店ごとに共同保険が設定される場合で、複雑代分契約と言われています。
複雑代分契約の場合、事前に代理店と保険会社の双方に引受確認を行う必要があり、その際、割引率を事前提示しないと、各保険会社は、引受可否を判断できません。
保険に詳しい方は、既にお気づきと思いますが、引受確認と割引率の事前共有は、同義語です。商慣習として、損害率データの合算結果を各社へ契約締結前にフィードバックすると、独占禁止法には抵触する可能性が生じます。
各保険会社の営業担当社員は、一般的な法令知識は理解していますが、いつの日か、独占禁止法に抵触しないかという確認を行わず、商慣習従って活動するケースが考えられます。ここに落とし穴があり、今回の調査の対象の要因になったと思われます。
事の真偽は分かりませんが、商慣習が常に適切かどうか、他の法令に抵触しないかという観点は、保険業界に限らず、企業活動には常に付きまといます。他業界だからと聞き流さずに、自社の事業活動にける商慣習が、独占禁止法に抵触する恐れがないか、役員同士、管理職との面談などを通じて、保有リスクとして意見交換しておくことが、望ましい対策と思います。



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