金融庁は、メガバンクとグループ証券2社に対し、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出しました。グループ親会社に対しては、銀行法に基づく報告徴求命令を出し、監督態勢を検証させることにしました。本日は、グループ会社におけるファイヤーウォール規制について、考えてみます。
本件は、法人顧客の同意を得ずに、当該法人に関する未公開情報をグループ会社間で共有したものです。銀行と証券に限らず、顧客から得た情報は、顧客の同意なしに他社と共有することは、ファイヤーウォール規制により禁止されています。
元々銀行と証券は、異なる特性を持つ商品を販売していましたが、最近は共通する商品も販売するようになりました。一方、金融機関グループとしては、取引先に対してグループのシナジー効果をもたらすことで、他グループとの差別化を図るという戦略があります。その結果、ファイヤーウォール規制に対して、垣根が低くなったことが想像されます。
自社グループにおいて、シナジー効果は常識であっても、ファイヤーウォール規制のもとでは、顧客の事前同意なくしては、グループ間の連携は禁止であることを再認識すべきでした。他にも、同様の事象が全くなかった訳ではないと思われます。
銀行・証券に限らず、グループ間のシナジー効果を求める企業グループは、守るべき法令とグループ施策が、相反関係にないかを見直し、商習慣や常識の中に法令に抵触する活動がないかを確認して、正しい事業活動へ変えていく取組みが求められます。
その為には、業務プロセスにおける商習慣や常識に踏み込んだ確認が必要となります。企業にとっては、今まで踏み込んだことのない領域につき、役職員の考え方を変えることを含めて、多くの改革が求められます。
本件をきっかけに、シナジー効果戦略に禁止行為を加えるグループ企業は多いと思われます。金融機関に限らず、グループ間の情報共有の実態が、法令に抵触しないかを確認しましょう。顧客が個人であれば、個人情報漏えいの可能性もあるからです。



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