鉄道の検査不正

railroad tracks in city

鉄道においても、検査不正があった旨、報道がありました。車輪に車軸を押し込む圧力の値が基準値を上回った際、基準値内に収まるようにデータを改ざんして検査記録表に記入したものです。本日は、鉄道の検査不正について、考えてみます。

当初は、脱線事故の調査過程で発覚しました。一定の基準を基に調査を行ったところ、数多くの車両において検査データの改ざんがあったことから公表に至りました。更に追加調査として、保有する全車両に拡大して、全容解明を行いました。

貨物列車は、農産物や化学品、石油などの重量製品も輸送することから、調査が与える影響は大きくなりました。輸送先から宅急便などの手段を使って配送することもあります。消費者への影響が小さかったことが、不幸中の幸いでした。

社内調査によると、不正した作業員は、作業に失敗するとコストが増える、部品を廃棄することが気になると発言したそうです。廃棄削減を含めてコスト削減への重圧が、不正の要因の一つになった模様です。

コスト削減や廃棄削減の取組みは、環境に対する取組みでもあり、社会貢献と位置付けている企業もあります。それゆえ、業務における優先順位も高く、評価にも影響するでしょう。皮肉なことに、社会貢献への強い達成意識が、従業員を不正に駆り立ててしまったことになります。

この事件は、新しいパターンです。目標達成の為にやらかすことはあれども、社会貢献や環境負荷を減らす為にやらかすことは、想定外の出来事です。環境への取組みや社会貢献の目標値を個別業務や組織ごとに定めている企業は、これを機に従業員への浸透度、目標への達成意識と不正が隣り合わせにあることを認識する必要が出てきました。

多くの企業は、鉄道とは異なる業界だからと関心を示さないかも知れません。しかし、不正に至る要因に着目すると、善良な企業となる為の目標が、不正に駆り立てることがあるという現実に直面しました。この新たなリスクに対して、危機感を高めるのが、リスク感応度が高い企業だと思います。

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