兼業代理店に新規制

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金融庁は、一定規模以上の本業をもつ兼業代理店に対し、不正を防ぐための体制整備を求めると共に、兼業代理店と委託契約する保険会社も対象とする方針であると、報道がありました。本日は、本報道について、コメントします。

報道によると、保険会社には、規模に関わらず全ての兼業代理店で顧客利益の保護に向けた方針の策定・公表を義務付ける方針です。例えば、営業部門と保険金の支払い管理部門の分離なども求めていくそうです。

背景にあるのは、昨年発覚した大規模中古車販売店による保険金不正請求事件です。この事件を通じ、大規模な兼業代理店に対する保険会社の管理・指導が十分に機能していなかったことや、兼業代理店に利益相反が起きやすい構造があることが、明らかになりました。

この方針を検討している金融審議会に参加した委員より「営業部門が強く支払いを求めることが、保険金支払い管理部門に対するプレッシャーになっている。営業的な配慮から切り離された支払い管理体制の構築が、最も必要。」と意見が出たそうです。

金融庁が想定している主な業種は、自動車販売・修理業、住宅販売・修理業と思われます。製造業、病院や鍼灸院などの医療機関、弁護士・税理士などの士業、販売を伴うサービス業、システム会社などが、本方針の対象に含まれるかは、今後の公開情報を確認する必要があります。

体制整備の求められる姿としては、不正を未然に防ぐ社内体制、教育や仕組みの他、単純な誤りを不正行為に発展させない教育や仕組み、業務実態を定期的に把握する点検監査体制やシステム制御、社外取締役の設置、利益相反業務を監視する部署の新設、不正を通報する制度の機能向上などが考えられます。

対象となる兼業代理店の中には、これを機に代理店事業撤退の検討を始めるかも知れません。代理店事業が、本業と利益相反する以上は、体制を整備したとしても、不正行為が起こらない保障はありません。不正行為の発生に伴う本業へのダメージや企業価値・信頼の失墜などの影響の大きさを考えれば、代理店事業を売却する選択肢もあり得ると思われます。

保険業法の目的は、保険業の公共性に鑑み、業務の健全で適切な運営と、募集の公正を確保することにより、契約者等の保護を図り、国民生活の安定と国民経済の健全な発展に資することです。

兼業代理店の本業と代理店業が利益相反した結果、募集の公正を確保できずに契約者等の保護を図れなくなる事象が起こったことから、金融庁は、新規制が必要と判断したものです。今後、金融庁が発信する情報を注視していく必要があると思われます。

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