有識者会議報告書の抜粋

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損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループの有識者会議の報告書の抜粋が、金融庁から公表されました。本日は、報告書を読んで感じたことについて、コメントします。

企業向けの保険には、保険会社による入札がある前提で話を進めている点に、違和感を感じました。大企業は、複数の事業を持ち、それぞれのリスクならびに全体で起き得るリスクなどを包括して補償する商品を求めています。保険会社は、個々の企業向けに専用プログラムを構成し、補償ごとの損害率に加え、企業グループ全体の損害率を考慮して、保険料を定めています。

各企業向けの専用プログラムであるが故に、保険会社が直接契約者から情報収集しないと、保険商品を提供できないレベルになっています。報告書では、保険仲立人の活用策を検討していますが、保険会社は企業グループ全体の損害率を考慮して保険料を定めているので、保険仲立人が入っても保険料が安くなることはないと思われます。また、企業向けの商品の中には、企業秘密も含まれていることから、社外の人には知られたくないので、保険仲立人や専業代理店は、採用しないと思われます。

保険仲立人の活用を推進して、日本に登録していない海外保険会社が直接契約することを可能にする策がありました。大手保険会社は、自社グループ内に海外保険会社を持っており、海外保険会社のノウハウや商品を活用して、企業側に提供しているので、契約者側にメリットがあるとも思われません。むしろ、商品約款や特約が複雑化している現状を踏まえると、保険料分担契方式よりも、再保険方式を採用する方が、認可商品の正しい運用に加えて、実務的にも適切ではないかと感じます。

契約者に対する特別の利益の提供については、企業から保険会社に対して、商品やサービスの購入を要請する行為は、保険会社または従業員が、商品またはサービスを購入することで、契約者に特別の利益を提供する行為に該当するので、以前より業法では禁止されています。今回は、契約者の範囲を企業グループへ拡大し、厳格化すると言う趣旨と理解しました。

問題は、政策株式の保有額や便宜供与で保険料シェアが決まることです。政策株式は売却することが解決しましたので、契約者側にも便宜供与の禁止を求める改正を検討するのは、自然な流れではないかと思われます。

代理店の本業もしくは副業が、保険と利益相反する可能性がある代理店に対する規制が必要なことは、起きた不祥事件から明らかです。その対象が自動車販売修理の特大規模だけで良いのか、火災、傷害、新種、船舶など他の保険との利益相反の可能性ある代理店まで広げるべきなのかは、更に検討が必要と感じました。

本日は、報告書を読んでいる前提で、コメントしました。興味をお持ちになった方は、以下のリンクにて報告書をお読みください。
金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)議事次第:金融庁

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