大手家具会社が運送業者に正当な対価を支払わなかったとして、公正取引委員会は、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで警告の行政指導を行う方針を固めた旨、報道がありました。本日は、独占禁止法違反とパワハラについて、考えてみます。
報道では、繁忙期に契約で定めた時間を超過しても残業代を支払わない、積み込みや返却の作業を無償で働かせるなどが業界の慣習となり、常態化していた可能性が高い模様。当該企業は事実を認め、不利益を受けた運送事業者に対し、本来受け取れるはずだった報酬との差額を全額支払う方針だそうです。
こうした不正行為は、企業間において優越的な関係が背景にあり、委託契約上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、委託関係にある運送事業者の労働者の就業環境が害されることにより、起こります。これは、まさにパワハラの定義に酷似していることに気づきます。
それゆえ、パワハラ研修の際、業務上のパワハラ、言い換えれば下請業者などの取引先に対して、不当な要求を行うと独占禁止法違反を問われると教育を行うことで、役員、管理職、従業員の皆様には、理解しやすいと思われます。不当な要求に限らず、優越的な立場を利用した価格ダンピングなど、独占禁止法や下請法の規程を説明しておくと、業務上において自身に降りかかって来るリスクを理解しやすくなります。
加えて、社会の常識を逸脱している場合には、優越的な立場を利用した不正行為とみなされることを教育しておくべきです。その際、過去から続いてきた社内の慣習や業界の商習慣であっても、法令違反に該当すれば、企業は社会から非難を受け、お客様の信頼を失う重大な事件に発展すると、教育しておきましょう。
なお、公正取引委員会による本警告は15年ぶりで、物流業界に広く残る慣習的な取引環境の是正を促す狙いがあるそうです。社外から指摘を受ける前に、自社内で行われている過去からの慣習や、業界の商習慣などについて、一般社会から見て適切かどうかを確認しておき、不適切な事象があれば謝罪のうえ必要な支払いを行い、必要に応じてニュースリリースまで行うと、企業の信頼は失いません。企業には、こういう事業活動ができることが求められています。



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