金融庁は、自動車ディーラーなどの「テリトリー制」について、保険会社による過度な便宜供与の温床となっているとみなし、廃止する方向で検討している旨、報道がありました。本日は、テリトリー制の廃止について、考えてみます。
テリトリー制とは、出先店舗ごとにお客様へ推奨する保険会社を決める仕組みです。各保険会社の寄与度・貢献度に応じて、各社へ店舗を配分する機能を有することが、保険業法の比較推奨販売義務の趣旨と異なると捉えているようです。昨年、社会を揺るがす保険金不正請求事件を起こした大型中古車販売店が、便宜供与の度合いによって推奨する保険会社を決めていたことが、引き金になっています。
具体的には、テリトリー制を許容する根拠となってきた「ハ方式」を、施行規則から削除する方針の模様です。「ハ方式」とは、お客様が特定の保険会社の指定がない場合、自社の経営方針など代理店都合の理由で、推奨する保険会社を定める方式です。
保険業法は法令ですから、全ての代理店に同じように適用する必要があります。そうなると、出先拠点を持ち、拠点ごとに推奨する保険会社を定めている代理店さんは、テリトリー制廃止の影響を受けます。
テリトリー制は、募集人教育の効率化という考え方で始まりましたが、代理店が保険販売実績とそれ以外の要素で保険会社を比較競争させるツールに変えてしまいました。中でも大手中古車販売会社では、このツールを悪用して競争を激化させ、保険会社各社が応じたことから、便宜供与の度合が推奨販売する保険会社を定める理由となってしまいました。
これまで、ディーラーの販売員は、推奨する保険会社の商品とサービスを習得することで足りました。その結果、自動車保険では、専業代理店より詳しいと言われていました。テリトリー制が廃止になれば、全乗合社の商品を習得して各社商品を比較して説明する能力も必要ですが、そこまで求めるお客様は、かなり少ないと思われます。
代理店が自立していない時代には、保険会社の営業担当に募集人教育を委ねてきました。しかし、2016年の保険業法改定に伴い、代理店自身が教育・管理・指導を行うことが主体的義務に変わって以降、保険会社の教育に頼らず、代理店自らが担うようになりつつあります。
代理店が募集する損害保険契約の9割は、更新契約です。テリトリー制の廃止が決まれば、比較推奨方針は「更新契約は当該保険会社を推奨し、新規契約はお客様の意向に従う」と変わるでしょう。
私見ですが、テリトリー制廃止の趣旨は、代理店内における保険会社シェアの変動について、代理店自ら主導で変動出来ない仕組みにすることです。自立化が出来ない代理店は、淘汰される時代に近づいたということです。



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