下請企業への違約金

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郵便事業を営む企業は、下請け企業へ業務委託して、配達してもらっています。顧客からの苦情があった場合に、下請け企業が違約金を支払う契約を締結しています。公正取引委員会は、違約金が不当に高額で、十分な説明なく複数の委託業者から徴収したとして、下請法違反を認定し、2024年6月に郵便事業会社に行政指導を行いました。違約金は、誤配達で3万円、たばこの臭いの苦情で10万円徴収する例があったと報道されています。本日は、下請け企業への業務委託について、考えてみます。

一般的に下請け企業へ業務委託を行う場合には、事前に法務部門または顧問弁護士を通じて、委託契約書の文言の適切性を確認します。その際、下請け企業に意図的な誤りがあった場合は、下請け企業が損失を補てんする特約を盛り込むケースがあります。

しかし、契約締結後に何らかの事情で契約内容の見直しを行った際、法務部門や顧問弁護士の確認を行わないまま、担当部署の判断により文言を追加修正するケースがあります。その内容が一般的な基準や社会常識から逸脱していても、下請け企業は契約を失うことを恐れ、甘んじて受けざるを得ません。

多くの企業の内部規則には、新たに契約を締結する場合や契約内容に著しく大きな変更があると認められる場合には、法務部門や顧問弁護士に確認を依頼して、社会的にみて常識的で妥当な契約であるかを確認することになっています。

しかし、今回の企業がそうだとは思いませんが、一般的な企業の事業担当部署には、必ずしも社会の常識に反する契約や自社に極端に有利な契約に関して、専門性があるとは限りません。そこが、企業を下請法違反に導く盲点になっています。

今回の報道は、公正取引委員会からの指導から半年後、新聞社が取材を申し入れた直後に、当該企業が下請け企業に対し、違約金減額の通知を行い、契約を見直しました。こうなってしまうと、何と言い訳しても、監督官庁から指導を受けても、報道されるまでは、契約の見直しを行わなかったと、見えてしまいます。

そうならないように、下請け企業、グループ会社との契約内容について、社会的に問題のある契約になっていないか、下請法などの法令違反に抵触する可能性がないかの観点で、定期的な点検が必要と思われます。

例えば、違約金を受け取ることで自社に利益が生じれば、社会から非常識とみなされます。下請け企業が不利になると思われる条項を抽出し、商慣習としては妥当だが社会一般の眼で見ると非常識でないかと言う観点で点検しないと、見つからないということが分かります。

点検は、○×式や適否判断で結果を求めるのではなく、どういう条項を抽出した確認した結果、どういう理由により社会の非常識には該当しないという書式で行うと、実効性が高まります。必要であれば、法務部門に判断を委ねることも点検を有効化します。

今回の報道を踏まえて、自社の点検が非常識な内容や常識を逸脱した契約になっていないかという観点で、点検ができる態勢を構築するという企業が増えることを望んでいます。

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