便宜供与

selective focus photography of male umpire

便宜供与とは他人のためにモノや利益を提供したりして、特別に計らうことを指します。企業の事業活動に照らすと、特定の個人や起業に対し、無償または不正に便宜を計り、利益を提供する行為を指します。本日は、保険業界における便宜供与について考えてみます。

今般、表面化した便宜供与が疑われる事象は、以下のとおりです。
 特定の中古車販売兼営代理店へ事故車両の入庫誘導の集中
 出向者による代理店の人件費削減
 特定の中古車販売兼営代理店へ社有車を安価で提供
 保険金不正が疑われる代理店へ徹底調査を行わない
 代理店や契約者から依頼を受けて、物品購入等の斡旋
 自社商品を推奨するキャンペーン展開と表彰
 特定の代理店への高額な自社広告費用の支払い
 大規模代理店に有利な手数料ポイント制度と表彰制度の運営など

上記をカテゴリーに分けると・・・こんな感じでしょうか。
 ①特定の代理店に、管理・指導・教育ができない弱さ(第一線)
 ②手数料の最大化を目的にした制度設計(本社)
 ③手数料以外の過剰な物品サービス購入・提供(本社・第一線)
 ④法令違反(比較推奨販売義務違反)を推奨する提案(本社・第一線)
 ⑤活動が、違反や非常識と気づかない社内風土や環境

当該代理店だから特別に・・・、当該代理店から当社だけ・・・と考えて行う事業活動の多くは、便宜供与にあたる可能性が高いということになります。代理店側から保険会社に依頼した場合も、便宜供与を求めたとなるので、発言に注意が必要です。

代理店手数料ポイントやボーナス手数料、広告料や人件費も、便宜供与に該当する確率が高まります。言い換えれば、全ての代理店に同じ対応する行為や管理・教育・指導であれば、便宜供与にあたることは、ありません。

本年6月を目途に、保険業法と監督指針の改正や見直しが行われる際には、便宜供与の禁止について再規定すると共に、具体的な記述も増えると思われます。関係法令により、保険会社や代理店等を取り締まり、契約者の利益を保護し、経済の健全な発達に寄与することを目的にしています。保険業法の第一条の文言そのものです。

再びこうしたことが起きないように、各保険会社や代理店等は、定期的に自らの事業活動の見直しや商習慣に非常識性がないかを考える自浄作用が、社会から求められています。法令もまた、社会の要請により改正が行われています。

その為には、コンプライアンス経営の実践は必須です。起こった事象により社会から失った信頼は大きく、取り戻すのは大変難しいです。社会の要請とは、社会の非常識にならない事業活動を排除して、良い人、良い会社であり続けることに尽きます。業界全体が信頼回復に向けて、新しい一歩を踏み出すことを期待しています。

コメント