業務品質の定義

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損害保険業界の不祥事が続いたことから、有識者によるワーキング・グループで議論したうえで、報告書が開示されました。本日は、報告書に記載されていた業務品質の定義について、考えてみます。

報告書は、顧客本位の業務運営、健全な競争環境の実現を求めています。顧客本位の業務運営は、大規模代理店の体制整備強化、比較推奨販売の適切な運営、代理店の管理・指導の実効性の確保、自主規制の整理の項目です。健全な競争環境の実現は、保険会社による便宜供与の禁止、企業代理店の規制の再構築(含む仲立人制度の見直し)、火災保険の赤字構造の改善について、記載しています。

そのうえで、第三者機関による評価基準を新設し、金融庁や財務局に代わって、代理店の評価を行う制度運営を行い、結果を共有すると共に、報告書が求めている姿へ改善していきます。

第三者評価基準についても、詳細に記載がありました。顧客対応、アフターフォロー、個人情報保護、ガバナンスの4項目に区分して、法令等遵守と顧客本位の業務運営に適っているかを評価基準とし、業務品質の高度化に資する項目・内容は、第三者評価での評価対象とはせず、損保各社で任意に設定・評価するそうです。

第三者評価は、法令等遵守と顧客本位の業務運営の部分を評価すると読めました。法令等遵守と顧客本位の業務運営は、既に定められている規則ですから、業務品質の評価というよりも、不法行為や法令抵触の有無に近いのではないかと思いました。適切な運営かどうかを評価するというのは、それだけ難しいことなのだと感じます。

業務品質の定義は、各種法令と監督指針に従う最低限の遵守レベルに対して、高いレベルを目指す、代理店の規模や特性を踏まえた工夫や改善の取組みの効果を意味するものと思っていましたので、業務品質の高度化に資する項目・内容は、第三者評価での評価対象とはせず、損保各社で任意に設定・評価するというのは、少し違和感を感じました。

特に、規模の大きな代理店の多くは、乗合代理店ですから、損保各社で任意に設定して評価されると、各社に差異が生じてしまい、代理店側が困惑するか、もしくは損保各社が他社の動向に配慮して忖度した評価を行う可能性があります。代理店手数料ポイントに直結するならば、なおさらです。

また、生保業界と損保業界の評価基準の統一化には触れていません。多くの代理店は生損保兼営している実態を鑑みると、二つの評価基準に向けた取組みや改善を行った結果、保険業界を生損保二つに分断しなければ良いのですが、心配です。

法令等の遵守や顧客本位の業務運営を行うのは、法の下で事業活動を行うのであれば当然のルールです。第三者から評価を受けるのであれば、それ以上の部分で評価を受ける方が、納得感があると感じました。

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