米国は、全ての国や地域に対して、一律に10%の関税をかけ、その後、各国ごとに異なる比率の追加関税をかける旨を発表しました。米国と貿易を行っている世界各国は驚き、対応や対策を講じる見込みです。本日は、米国の立場で本件について、考えてみます。
一律の関税をかけることにより、米国国内へ輸入した商品は関税分だけ値段が高くなり、米国消費者の負担が増加します。仮に、輸入品の購買意欲が変わらないと、実質的に米国の物価が上がり、国民の生活費は増加します。米国全体ではインフレ傾向になるかも知れません。
しかし、一般的には、販売価格が一律に上がることにより、輸入品の購買意欲がなくなります。今までは市場原理に基づき、品質に合った価格が設定されていましたが、購入する商品の品質上がらなければ、販売価格に見合わなくなるからです。
それゆえ、米国で生産して販売できれば、関税の対象外になります。米国へ輸出していた商品につき、米国に生産工場を建設して、現地従業員を雇用するという対策を講じることもあるでしょう。但し、製品の品質が変わらないことが前提です。
米国の貿易統計によると、2024年の米国の貿易赤字は約180兆円に上り、過去最大となりました。米政府高官は「持続不可能で、緊急事態だ」と述べ、巨額の貿易赤字が米国の安全保障を脅かしていると認定しています。それゆえ、高関税で貿易赤字を削減する必要性を強調した格好になります。
要すれば、米国は貿易赤字を削減する為に、輸入できない環境にする対策を講じたことになります。しかし、貿易は相手国との間に信頼関係があることが前提です。理不尽で高い関税を一律、または貿易赤字を助長する商品には更に高関税をかけることで、米国の信頼は失われ、仮に米国から輸入していた商品の購入を避ける事態が発生し、輸入額を上回るほどの輸出額の減少が起これば、関税政策は成功しないことになります。
もう少し様子を見ないと、関税効果や相手国の反応が見えてきませんが、各国の株式市場は敏感に反応しています。米国のナスダックは連日下がり始め、米国と貿易量が少ない国を除けば、日本を含む各国株式市場は、大きく下がっています。このままの状況が続けば、世界同時恐慌に発展する可能性があります。
人々の生活に必要不可欠で、品質が良く安心して購入できる環境があれば、多少高くとも購入するというユーザー心理が働く可能性も否定できません。日本国内のラーメンの価格は、500円から900円程度でしたが、昨今は1,000円から1,500円近くなりつつあります。賃金の上昇、製造価格の上昇、インバウンドの急増などの要素が背景にあるようですが、環境が整えば、価格が大きく上がっても、商品販売状況は変わらない、または増加することもあり得る訳です。
とは言っても、3月末は年度決算が多い時期であり、配当金を得る為に株式保有数が多い季節でしたので、急激な株価下落は、印象的にも良くないように思えます。商品購入は、価格、提供されるサービス、品質、安全性、耐久性、安定性などが購入を決める要素になると言われています。今後、相手国が米国への関税を上げる対抗策を講じ、世界市場が混乱を極めることは、避けて欲しいと考えます。



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