医療機器メーカーの営業担当者たちが、医療機関で手術に立ち会い、資格を持たずにX線装置を操作していた旨、報道がありました。人命に関わる手術に、外部の人間が関与していたことは、驚きでした。本日は、本件について、考えてみます。
言うまでもなく、X線は放射線です。その照射は、人体に影響を与える恐れがあります。それゆえ、操作は医師らに限ると診療放射線技師法で定められていることから、報道が事実であれば、同法違反になります。
医療現場で患者さんにX線を当てて撮影・検査を行うには、診療放射線技師、または医師の資格が必須と規定されています。看護師や臨定検査技師が、X線装置を直接操作することは、原則不可とされています。
この報道で違法行為が行われていたのは、大学病院です。仮に、X線装置を製造・販売している企業の営業担当者が、患者の手術の際、レントゲン装置の操作を自身が行いたいと申し出たとすれば、病院側は断ることができると思われます。
しかし、逆の場合、すなわち大学病院において、レントゲンを操作する技師が不足していて、製造メーカーの営業担当者に依頼する可能性は否定できないと思われます。大学病院は、企業にとって大口顧客ですから、自社製品のボタンを押下する程度であれば、構わないと判断したことは、容易に想像できます。
この事件は、製造メーカーが法令違反したと報道されていますが、両者の力関係から考えると、大学病院側が強く要請して、最初は1回だけ操作させ、何も起こらなかったことから恒常化したものと考えると、腹落ちするでしょう。
顧客との力関係を要因として、法令違反やモラルを超えた要請を受けて、悩む企業従業員は、全ての業種に存在します。最初は、ほんの1回のつもりが、いつの間にか補助要員に格上げされ、異動による担当者変更の際にも、引継書に記録されるまでに至ってしまうと、取り返しのつかない事態になります。
そのような不祥事を防ぐには、営業担当者が法令違反やモラルを超えた要請を受けていないかという観点で、定期的に相談できる環境を整えること、あわせて他社で起きた事例を材料にして、営業担当者研修を行うことに尽きると考えます。
社内から声が上がり、自社の誤りに気づき、事業活動を修正することは、どんな企業にもできる改善運動です。自社ホームページに、そういう改善活動を実施して改善した事象を開示することが、望ましいでしょう。その内容を従業員に読ませることで、上司や会社に相談しやすい環境や社内文化が醸成できると思います。



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