企業の社会的責任

woman with beaded necklace covering her mouth with her hand

タレントに過去複数のコンプライアンス違反があったと確認した旨、テレビ局が公表し、当該タレントを番組から降板させました。具体的な違反内容は、プライバシー保護を理由に開示しませんでした。本日は、企業の社会的責任について、考えてみます。

多くのタレントは、テレビ、ラジオ、雑誌、スポンサーなどが活用しています。自社がタレントの違反行為を公表した一方で、他社やスポンサーには、プライバシー保護を理由に情報提供しない姿勢は、社会的責任を果たしていないと感じます。当該タレントとCM契約をしている企業が、仮に当該テレビ局にスポンサー番組を持っていれば、テレビ局に対し違和感を感じるでしょう。

企業は、公共性と社会的責任を担うという一面があり、コンプライアンスに関する課題にも、社会的責任を果たす役割を担っています。当該テレビ局の親会社も、社会課題を解決していくことを中期経営計画に掲げています。

たとえ、プライバシー保護の必要があっても、ハラスメントなのか、犯罪行為を疑われる出来事なのかなど、違反類型は公表しないと、他社は判断できません。コンプライアンス違反があっても社会倫理に反する行為でなければ、番組を降板させるには至らないと判断する企業もあり、判断基準は、各社により異なるからです。

また、当該テレビ局は、発生原因や再発防止策についても、述べていません。タレントへの過度な便宜供与や甘やかしが局内にあるなど、発生原因は様々でしょう。タレントが違反行為をしても、周囲にいる人々がその場で注意するなど、未然に、もしくは軽微なうちに止める仕組みや教育がないと、再発する可能性があります。

更に、他のタレントにとっては、これだけの情報では、自身が何をどうすれば、その前に回避できるのか、注意すべき点なども含めて、対策の取りようがなく、恐怖でしかあり得ません。当該局が、タレントの弱みを突いて、番組降板という形で、仕事ができないように陥れたと勘違いする可能性すらあります。

例えば、番組収録中や休憩中に、当該タレントが製作スタッフに対して、繰り返し強い物言いをし、LINEなどで追加攻撃するなど目に余る行為があったとか、不適切な画像をスタッフに送りつけ、嫌がったり注意したりしても止めなかったなど、プライバシーを保護しながら、他社に判断材料を与えることは、可能でしょう。

プライバシー保護を理由に概要を公表しないのであれば、コンプライアンス違反で降板という形でなく、局との間の信頼関係を失う事象があり、やむを得ず番組を降板いただくことになったなど、公表の仕方を工夫することも可能です。

企業において、コンプライアンス問題が発生した時、その対処が社会的責任を果たしたか否かは、社会が評価し、判断します。自社の課題の排除、解決に加えて、同業他社、スポンサーなどのステークホルダーも守る姿勢がないと、社会との共存という観点で課題を残すことがあります。今回の対応については、このような観点で、違和感を感じました。

コメント