2025年の保険業法等改正により、保険代理店の業務運営に求められる体制整備が大きく変わります。 本記事では、代理店視点で特に重要な3つの改正ポイントを、実際に起きた事案をもとにわかりやすく解説します。 「何が起きたのか」「なぜ改正されたのか」「代理店はどう備えるべきか」を順を追ってご説明します。
まず、中古車販売・自動車修理業を営む代理店が保険金を不正請求した事件です。代理店は、保険募集を行い事故では支払い手続きの支援を行う役割です。一方、自動車修理業を営む代理店は、自動車保険事故が起これば、修理業者としての売上や利益を得る事業活動を持っていて、保険会社と利益相反することになります。
その自動車修理業を営む代理店が、保険会社や契約者をだまし、不正で過大な請求を行っていました。それゆえ自動車修理業のように、不正で過大な請求を行うことで顧客の利益と信頼を害するおそれのある業務を持つ兼業代理店には、そのおそれのある業務を特定したうえで、それを適切に防止する仕組みとして、新たに体制整備義務を負うことになりました。
専業代理店においても、自社とグループ会社に自動車修理業や住宅修理業など保険金に関係する事業があれば、この対象になり得ます。募集と修理を兼務しない、事業部と担当役員を分ける、保険会社への請求内容は定期的に点検し、単価や修理内容を検証し、不正や過大な請求を監視する等が考えられます。具体的に何をすれば良いかについては、監督指針等に記載されると思われます。
次に、保険会社各社が企業契約の保険料を調整した事件、ならびに前述した保険金の不正請求事件において、保険会社と代理店、契約者との間に便宜供与があったが故に、不適切な事件の発生を防げず、早期発見できなかった旨の課題がありました。当該事件の調査過程で、政策保有株式、販売協力、代理店業務の保険会社による代行、保険会社から代理店への出向制度などに課題があると判明しました。
そこで、保険会社等から保険契約者等への過度な便宜供与を禁止する旨を保険業法に修正しました。代理店視点では、保険会社に自社の業務を代わりに依頼する行為、お客様への販売協力と称した依頼行為、自社の株式を保険会社に購入してもらう行為などが、過度な便宜供与に該当します。個々の募集人が直接保険会社の担当者へ依頼しないように研修等で周知し、不正行為がないように確認することが求められます。
第三に、二つの事件は共に、規模の大きい乗合代理店で発生しました。調査過程において、規模が大きい乗合代理店に対し、保険会社が過度な便宜供与や代理店を優遇する活動が疑われました。これは保険会社側の責任ですが、それを要求する代理店側にも課題があると認められました。保険会社は、代理店への出向制度を廃止、または目的を限定する制度へ改善すると思われます。
そこで、規模の大きい乗合代理店に対し、新たに体制整備義務を新設しました。具体的には、法令等遵守責任者・統括責任者の設置、苦情処理体制の整備、兼業業務を適切に監視する体制整備義務です。
今回は、規模の大きい代理店だけの義務ですが、規模に関係なく、体制整備義務を求められていることから、対象とならない代理店においても、体制の構築と役割や仕組み機能を運営できることが、業務品質の高い代理店として求められると思われます。
法令等遵守責任者、統括責任者、苦情処理責任者、兼業業務管理責任者を新設すれば良いだけの法令ではないことは、ご認識の通りです。各責任者の役割を定義して、機能させるための運営を経営陣が主導が行うことが求められます。これができているか、形骸化していないかについて、保険会社が代理店監査の項目に入れるでしょう。
改正の主な項目は以上です。もう少し具体的に説明やアドバイスが欲しいという代理店主の皆様は、本ホームページ上段の「お問合せ」より、ご連絡ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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