消費期限偽装とコンプライアンス経営

a woman shopping in the supermarket

コンビニエンスストアを運営する企業において、食品の消費期限を偽装して販売していたという報道がありました。 この件は、単なる“表示ミス”ではなく、お客様や社会との信頼関係を揺るがす重大なコンプライアンス違反として受け止めるべき事件でした。

<コンプライアンス経営とは、信頼を得る営みである>
コンプライアンスという言葉は、法令遵守と訳されがちですが、実際の経営においては、「お客様や社会からの信頼を得ること」そのものです。 つまり、制度やルールを守ることは目的ではなく、信頼を守るための手段なのです。

たとえ一部の店舗や個人の判断であったとしても、消費期限の偽装は組織としての信頼を損なう行為です。「店舗で起こったことだから仕方ない」では済まされません。むしろ、「店舗で起こったからこそ、組織としての責任がある」と考えるべきです。

<なぜ、こうした偽装が起こるのか>
現場では、「廃棄を減らしたい」「売上を維持したい」「上司に怒られたくない」といった“目の前の都合”が、判断を曇らせることがあります。しかし、こうした判断が積み重なると、組織としての信頼が失われるリスクに直結します。言い換えれば、期限切れ商品を廃棄する判断が、現場で“迷いなく”できるかどうかです。問われるべきは、「制度があったかどうか」ではなく、 その制度が“現場の行動”につながっていたかどうかです。

<制度と行動の接点をどう設計するか>
コンプライアンス経営を実効性あるものにするためには、以下のような視点が必要と言われています。
 〇 表示ルールや期限管理の制度を、現場で“意味あるもの”として理解させる
 〇 「守る理由」を伝えることで、行動の背景に“信頼”を置く  
 〇 違反が起きた時に、「誰が悪いか」ではなく「なぜ起きたか」を問い直す  
 〇 再発防止策を“現場の言葉”で設計し、共有する  
 〇 日常業務の中で、信頼を守る行動を“見える化”する
制度は、紙の上ではなく、現場の判断に染み込んでこそ意味があります。

<まとめ>
消費期限の偽装は、単なるルール違反ではなく、社会の信頼を失う行為です。信頼は、一度失えば、回復に時間と努力が必要になります。コンプライアンス経営の基本は、「信頼を得続けること」。そのためには、制度を整えるだけでなく、現場の行動と制度の接点を設計することが欠かせません。

本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次の機会には、こうした制度設計を“教育”や“仕組み化”の観点からどう支えるかについて、考えてみたいと思います。

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