便宜供与ルールを形に

photo of a woman thinking

これまでのブログでは、保険業法の改正を受けて、代理店が便宜供与に関する社内規則や教育体制をどう整えるかについて考察してきました。 その続編として、こうしたルールや考え方を、業務マニュアルやチェックリストという“実務の形”にどう落とし込むかについて、整理してみたいと思います。

<なぜ“形にする”必要があるのか>
制度改正により、代理店には「体制整備義務」が課されるようになりました。 しかし、ルールや教育だけでは、現場の判断を支えるには十分とは言えません。 実際の業務の中で、迷わず判断できる“道具”となる、マニュアルやチェックリストが必要になります。
 〇 判断の一貫性を保つ
 〇 記録と説明責任を果たす
 〇 教育・監査・改善のサイクルを回す
こうした目的を果たすために、「形にする」ことが求められています。

<業務マニュアルに盛り込むべき項目>
業務マニュアルは、“業務の流れ”と“判断の基準”をセットで示すものです。 以下のような項目を、代理店の実態に合わせて整理すると効果的です。
 〇 保険会社からの支援依頼の受付・承認フロー
 〇 契約紹介・採用支援・イベント協力の判断基準
 〇 苦情対応・満期情報収集の役割分担と境界線
 〇 保険会社との協議記録の作成・保管ルール
 〇 社内通報・相談の受付と対応フロー
 〇 教育・研修の実施記録と振り返り方法
ポイントは、「業務の流れの中で、どこで判断が必要か」「誰が関与するか」を明示することです。

<チェックリストで“迷い”を減らす>
チェックリストは、現場での判断を支える“確認ツール”です。 特に、便宜供与に関する判断はグレーゾーンが多いため、「確認すべき視点」を整理することが重要です。
 〇 この支援は、他代理店と比べて公平か?
 〇 顧客の選択機会を狭める可能性はないか?
 〇 自社の経営理念から逸脱していないか?
 〇 社内で承認・記録が行われているか?
 〇 保険会社との協議内容が文書化されているか?
チェックリストは、「判断の質」を高めるだけでなく、「記録の裏付け」としても機能します。

<実務への展開の工夫>
マニュアルとチェックリストは、紙やPDFだけでなく、社内共有フォルダやクラウドで保管して運用します。「作って終わり」ではなく、「使って育てる」ことが大切です。
 〇 教育研修の場で、実際の事例を使ってチェックリストを活用してみる
 〇 改正された保険業法や監督指針の該当部分を、マニュアルの冒頭に添える
 〇 定期的に見直しを行い、現場の声を反映する

<まとめ:業法改正を“業務の道具”に変える>
業法の改正は、代理店にとって「お客様や社会から信頼される業務運営とは何か」を問い直す機会です。 その答えは、ルールや教育だけでなく、日々の業務の中で使える“道具”としてのマニュアルとチェックリストにあります。

次の機会には、こうしたマニュアルやチェックリストを、代理店の規模や業態に応じてどうカスタマイズするかについて、さらに掘り下げてみたいと思います。 本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント