募集人を守る仕組み作り

man in pink dress shirt

最近、保険代理店の経営者から、こんな話をいただきました。 募集人が、顧客からの強い言動により精神的な負担を感じ、役員を含め複数人で対応にあたったものの、事態は収まらず、最終的には保険会社の支援を受けて、ようやく解決に至ったという事例です。

このようなケースは、代理店に限らず、一般社会でも増えてきています。 飲食店や医療機関、公共交通機関などでも、いわゆるカスタマー・ハラスメント(カスハラ)と呼ばれる行為が問題となり、対応マニュアルの整備や従業員を保護する為の仕組みづくりが進んでいます。

代理店では、このような社内の対応マニュアルや従業員を守る仕組みができているのでしょうか。保険会社のコンプライアンス・ハンドブックには、お客様の声、ハラスメントの各項目はありますが、それを結びつける項目はないようです。代理店の従業員を守る仕組みがないならば、自社でルールを作って、従業員を守る仕組みは必要と思われます。

<お客様の声は“すべて対応すべき”ではない>
保険代理店においても、顧客からの声は多岐にわたります。
 〇 苦情や不満
 〇 ご意見・ご要望
 〇 お褒め・感謝の言葉
 〇 社会通念を逸脱したハラスメント的言動
これらをすべて「お客様の声」として一括りにしてしまうと、現場の従業員は「何でも我慢しなければならない」と感じてしまいます。 しかし、苦情とハラスメントは、対応の目的も方法も異なるのです。

<問題の構造と対応の流れ>
実際の現場では、以下のような流れが起きています。
 1.顧客からの苦情・強い言動が発生
 2.募集人が対応するが、精神的負担を感じる
 3.管理職や役員が関与するも、事態が長期化
 4.保険会社などの支援を受けて、ようやく解決
 5.その後、社内での振り返りや再発防止策が検討される
この流れを見ても分かるように、苦情対応とハラスメント対応は連続しているが、分けて考える必要があるかも知れません。

<自社方針と社内ルールの必要性>
こうした事案に対応するには、まず「お客様の声とハラスメントに関する自社方針」を明確にすることが必要です。
 〇 苦情には誠実に対応する
 〇 ハラスメントには毅然と対応する
 〇 従業員の安全と尊厳を守る
 〇 顧客との信頼関係を大切にする
この方針を、社内ルールとして明文化することで、従業員が安心して判断・相談できる環境が整います。

<運用マニュアルは“考える仕組み”として>
社内ルールを実行に移すためには、運用マニュアルが必要です。 マニュアルは、単なる手順書ではなく、現場で「どう考え、どう動くか」を支える仕組みです。
 〇 苦情対応の流れ(受付→記録→対応→報告)
 〇 ハラスメント対応の判断基準と対応フロー
 〇 問題解決後の振り返りと再発防止策の検討
 〇 ご意見・ご要望の社内共有と保険会社への提案
 〇 お褒め・感謝の声の社内展開とモチベーション向上
このような連続性のあるマニュアルがあれば、従業員は「対応して終わり」ではなく、「対応したからこそ、次につなげる」意識を持てるようになります。

<まとめ>
お客様の声は、組織を育てる貴重な材料です。 しかし、すべての声を無条件に受け入れるのではなく、苦情とハラスメントを分けて考え、対応の質を高めることが、従業員の安心と顧客の信頼の両立につながります。

そのためには、自社方針の明文化、社内ルールの整備、そして運用マニュアルの構築が不可欠です。 次回は、このマニュアルの具体的な構成と活用方法について、さらに掘り下げてみたいと思います。本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント