2025年8月末に改正された金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」は、代理店にも「顧客本位の業務運営」を実効性あるものとして求めています。前編では、業務品質の確保・向上と記録・検証の仕組み、教育・研修の自社設計と定着支援について取り上げました。後編では、保険会社との関係性の見直しや、苦情・事故対応の社内運用について、さらに掘り下げてみたいと思います。
<体制整備の視点③:保険会社との関係性の見直しと情報共有の仕組み>
保険会社との関係性は、代理店の業務運営に大きな影響を与えます。しかし、関係性が“依存”や“受け身”になってしまうと、顧客本位の判断が歪むリスクがあります。
〇 保険会社からの制度説明や要請事項を、自社で整理・検証する体制を持つ
〇 保険会社の担当者とのやり取りを記録し、社内で共有する仕組みを整える
〇 保険会社に対して、現場の声や改善提案を冷静に伝えるルートを確保する
〇 苦情や事故対応の傾向など、現場の実態を保険会社と共有する姿勢を持つ
保険会社との関係性は、上下ではなく“イコール・パートナー”であるべきです。そのためには、情報を受け取るだけでなく、自社の視点を持って対話する姿勢が必要です。「この件は、こういう背景があるので、こう対応したい」と伝えられる代理店こそが、顧客本位の業務運営を実現できます。
<体制整備の視点④:苦情・事故対応の社内運用と改善ループ>
苦情や事故対応は、お客様の不安が最も大きくなる場面です。 この対応が代理店任せになっていたり、保険会社任せになっていたりすると、信頼を損なう可能性があります。
〇 苦情や事故対応の履歴を記録し、社内で共有・分析する
〇 対応の判断基準やフローを、社内で明文化しておく
〇 募集人が対応に迷ったとき、相談できる社内窓口を設ける
〇 苦情や事故対応の事例をもとに、改善策を検討し、研修やマニュアルに反映する
苦情対応は“その場限り”ではなく、“次につなげる改善の材料”です。「この対応は良かった」「この点は改善できるかもしれない」と振り返ることで、業務品質の向上につながります。経営者が定期的に履歴を確認し、現場と対話することで、対応力の底上げが図れます。
<まとめ>
監督指針の改正は、代理店にとって「何かを変えなければならない」というプレッシャーではなく、「今の体制を見直すきっかけ」だと捉えていただきたいと思います。保険会社との関係性の見直し、苦情・事故対応の社内運用――どちらも、すぐに完璧に整える必要はありません。まずは「できることから始め」て、実務に活かしていくことが、顧客本位の業務運営への第一歩です。前編・後編を通じて、少しでも皆様の体制整備のヒントになれば幸いです。本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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