市の幹部職員によるパワハラが1年以上にわたり放置されていたという報道がありました。 内部通報は昨年7月に行われていたにもかかわらず、対応は進まず、事態は長期化しました。この出来事は、単なる個人の問題ではなく、組織がなぜ動けなかったのかという構造的な問いを私たちに投げかけています。
<なぜ対応が止まるのか>
通報を受けたのは、報道内容から見てコンプライアンス対応部署だったと考えられます。しかし、対応が進まなかった背景には、次のような“見えない要因”があった可能性があります。
〇 加害者が幹部であることによる忖度
「あの人に直接関わるのは避けたい」「波風を立てたくない」
〇 部署内の力関係
担当者が動きたくても、部署長が慎重姿勢を崩さない
〇 上司への報告後の“躊躇”
さらに上位の管理職が調査開始をためらう
〇 「証拠が不十分」「確認が難しい」として、動かないことを正当化する空気
こうした構造は、組織の“自浄作用”を止める力学そのものです。
<大きな組織ほど、強いコンプラ部署が必要>
組織が大きくなるほど、権限の大きい“権力者”が第一線に存在します。そのような環境では、コンプライアンス対応部署が“忖度しない強さ”を持つことが不可欠です。
〇 第三者機関との連携
外部の視点を入れることで、組織内の力学から自由な判断が可能になる
〇 独立した調査権限の確保
加害者の地位に関係なく、調査を開始できる仕組み
〇 調査担当者の保護制度
報復や孤立を防ぐ制度的支援
〇 上位者への報告義務の再設計
報告が“調査の妨げ”にならないよう、タイミングと範囲を明確化
<実効性を評価する風土づくり>
制度があっても、運用されなければ意味がありません。そのためには、コンプラ対応の“実効性”を評価する風土が必要です。
〇 「制度があるか」ではなく「制度が動いたか」を見る
〇 「誰が守られたか」「誰が動いたか」を記録し、振り返る
〇 「動いた部署を評価する」文化をつくる
こうした風土が、組織の信頼を守る力になります。
<まとめ>
コンプライアンス対応部署は、組織の信頼を守る最後の砦です。その砦が、忖度や力関係に押し流されないよう、強さと独立性を持たせること。そして、その実効性を評価する風土を育てること。それが、企業が社会から選ばれ続けるための不可欠な仕組みだと考えています。こうした視点を持ち、制度設計や風土づくりの支援を通じて、お客様の「健全な組織づくり」を支えることが、経営の役割だと感じています。
小さな制度の見直しや、ひとつの対話からでも、組織は変わり始めます。今日の気づきが、信頼を守る一歩につながることを願っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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