6月から改正保険業法が施行され、保険会社と保険代理店の関係は、これまでの延長線ではなく、より適正な方向へと修正されていく流れにあります。これは、法令が求める姿に向けて、業界全体が少しずつ「あるべき姿」へ向かっていくという意味での変化です。本日は、その流れを踏まえながら、「代理店と保険会社の適正な関係」について整理してみます。
1.保険会社による教育・管理・指導は継続する
今後は、保険会社が「見積書作成などの単純な支援業務は控える」という趣旨の説明があるかも知れません。これは、過度な便宜供与と見なされるリスクを避けるための対応であり、適正な関係への移行の一環と考えるべきです。「保険会社が代理店への教育・指導を放棄した」 と受け取るのは誤解です。支援業務の見直しと、教育・管理・指導の役割は、本来まったく別の話です。
2.代理店が担う教育と保険会社が担う教育
代理店と保険会社には、それぞれ異なる役割があります。
代理店が担うべき教育は、個人向け商品や定型商品の見積書作成、保険会社のシステム操作、募集プロセスの社内ルールに関する教育、新人募集人の育成・強化などです。資格取得から数年経過した募集人が、個人向け商品や中小企業向け商品の見積書すら作れないという状況は、代理店内教育の課題であり、保険会社の責任ではありません。
一方で、保険会社が担うべき教育は、代理店内の教育担当者の育成、新商品・改定の背景説明、マニュアルに書かれていない実務的な疑問への照会応答、高度なリスク分析や専門領域・周辺領域の知識提供、代理店が自力で判断しにくい論点のサポート、保険会社しかできない契約の保険料算出などです。つまり、「基本業務は代理店が担い、高度領域は保険会社が支援する」という役割分担が、本来の姿です。
3.乗合代理店が陥りやすい運用
乗合代理店では、保険会社ごとに商品やシステム仕様が異なります。そのため、商品に慣れている会社やシステムが使いやすい会社の商品に偏る傾向が生じます。これは顧客本位の業務運営や比較推奨販売の観点からは、問題があります。「売りやすい商品」ではなく、「顧客に最適な商品」を選ぶことが、法令で求められていることを忘れてはなりません。これが本来の姿であり、ここにこそ保険会社の高度な支援が必要です。
4.適正な関係とは
改正保険業法の流れを踏まえると、代理店と保険会社は、次のような関係へ向かうべきだと考えています。
① 代理店は自立(律)する
〇 顧客本位の判断を最優先にする
〇 基本業務は自力で完結
〇 基本業務に課題のある募集人への教育は自社で行う
〇 保険会社へ支援を受ける際には、責任者の了解を得る
② 保険会社は高度領域の支援に集中する
〇 代理店が判断に迷う領域のサポート
〇 法人顧客への保険周辺知識やサービスの提案・提供
〇 代理店の経営者・教育担当・コンプラ担当への教育・支援
③ 相互依存ではなく、自立 × 協働のパートナーシップへ
〇 事務代行ではなく、専門性強化を目的にした支援
〇 依存ではなく、補完
〇 上下関係ではなく、協働関係
これが、求められる新しいパートナーシップの形だと思います。
5.顧客本位の業務運営を実現
代理店と保険会社がどれだけ議論しても、最終的に立ち返るべきは顧客本位の業務運営の実現です。
代理店は、自社教育の強化、比較推奨販売など改正された法令の徹底こそ、今すべきことです。一方、保険会社は、高度な知識提供、疑問への迅速な照会応当などの新たな支援業務の定義づけと代理店向けの説明、および速やかな業務移行です。言うまでもなく、顧客本位の業務運営に関する理解を同じくしておくことが何より重要です。それゆえ、改正保険業法の説明だけに留まらず、それに伴い代理店、保険会社が変わるべき点や、新たに担う役割の線引きを共有し、理解し合うことが、最も重要なポイントです。
<まとめ>
改正保険業法の施行という過渡期だからこそ、未来志向の関係を築く機会です。改正保険業法は、代理店と保険会社の関係を適正化する流れを後押ししています。混乱は避けられませんが、方向性は決して暗くありません。
〇 相互依存から、自立と協働へ変えていく
〇 事務代行と思われる習慣は、専門性の支援へと格上げする
〇 どちらかの努力でなくお互いが努力する
法令が変わった時こそ、変革を進める絶好機です。代理店はより高度な自立(自律)を目指し、保険会社はより高度な知識・情報・サービスの提供を進めていくことになります。営業職員やライフプランナーも募集人であることに変わりはありませんので、例外ではありません。保険業法は生損保に同じ法令だからです。
今までは良かったから、関係を壊したくない、関係悪化は挙績に影響するなどと言う考え方は、トップダウンとボトムアップの両方で変えていきましょう。「この程度なら」が積み重なると、いつの間にか法令違反につながるという自覚をもって、代理店内の体制整備を進めていきましょう。過渡期だからこそ、代理店と保険会社が同じ方向を向くことが重要です。



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