最近、損害保険会社から「業務規定を策定してください」という依頼を受けたという声を耳にするようになりました。一方で、生保会社から同じ依頼が来ることはほとんどありません。この温度差に、戸惑いを感じている代理店さんも多いのではないでしょうか。本日は、業務規定とコンプライアンス・ハンドブックの違いについて、整理してみたいと思います。
1.業務規定を求めるようになった背景
2022年以降、監督指針で「代理店の自律的管理」が強調されました。これを受けて、損害保険会社は代理店管理をより細かく行うようになり、文書化された業務規定を求める動きが強まりました。背景には次のような事情があります。
〇 業務品質評価制度が新設された
〇 代理店の内部統制を書面で確認する必要が出てきた
〇 監督当局からのチェックに備える必要がある
一方、生保会社は評価制度が損保ほど細かくなく、乗合代理店の比率も高いため、足並みが揃いにくいという事情があります。その結果、「損保だけが業務規定を求める」という現象が起きているというのが実態です。
2.コンプライアンス・ハンドブックとの違い
ここが最も誤解されやすい部分です。多くの代理店さんが「ハンドブックがあるのに、なぜ業務規定が必要なのか」と疑問を持つのは当然です。実は、この2つは役割がまったく異なります。
〇 コンプライアンス・ハンドブック(保険会社のルール)
何を守るべきか(遵守事項)
説明義務、禁止事項、反社排除、利益供与の禁止など
保険会社が定める上位規程
〇 業務規定(代理店のルール)
自社の業務フロー・役割分担・内部点検など
どう運営するか(自社の運用方法)
誰が、いつ、何を、どう記録し、どう保管するか
つまり、ハンドブック=「守るべきルール」、業務規定=「運用の仕方」という関係です。この違いを理解しないまま業務規定を作ると、ハンドブックの内容を書き写すことになり、二重管理が発生します。
3.二重管理が起きる理由と回避策
最近の現場で最も多い混乱が、この「二重管理」です。二重管理が起きる理由は、以下のとおりです。
〇 遵守事項と運用方法の区別が曖昧になる
〇 ハンドブックの内容を業務規定に重複して書いてしまう
〇 損保会社の要求をそのまま受け入れ、責任者を乱立させてしまう
そこで、次の3つを守ると、二重管理が避けられます。
① 業務規定には自社の運用だけを書く
禁止事項や説明義務は書かない。 それはハンドブックに委ねる。
② 業務規定の冒頭に「上位規程」を明記する
法令およびコンプライアンス・ハンドブックを上位規程とする。
③ 責任者は1名に集約し、担当者は兼務で十分
損保会社は項目ごとに責任者を求めますが、現実的ではありません。
4.生損保で足並みが揃わない理由
代理店さんが最も困惑するのが、「損保は細かいのに、生保は何も言ってこない」という点です。これは、業界構造の違いによるものです。
損保:業務品質評価制度が細かく、代理店管理が厳しい
生保:評価制度が緩く、乗合代理店が多いため統一が難しい
つまり、損保と生保は、求めている管理レベルが違うということです。代理店としては、この温度差に振り回されないためにも、自社の業務規定をどの会社にも依存しない形で整える ことが重要になります。
<まとめ>
業務規定は書類作成ではなく、自社の運営を整えるためのものです。
〇 損保だけが業務規定を求める背景には、業界構造の違い
〇 ハンドブックと業務規定は役割が異なる
〇 二重管理を避けるには、運用だけを書くことが重要
〇 生損保の温度差に左右されないためにも、自社の業務規定が必要
〇 業務規定は、現場を守り、組織を安定させるためのツール
業務規定は、書類のための書類ではありません。代理店の現場を守り、業務を安定させるための自社のルールブックです。まずはその本質を理解することが、混乱を避ける第一歩だと感じています。次の機会には、具体的な規定づくりについて、考えてみたいと思っています。



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