国内トップ大学の教授が、共同研究先の企業から高額接待を受け、便宜を図った疑いで逮捕されたというニュースが報じられました。大学という“清廉性が前提”の組織で起きた事件だけに、社会に大きな衝撃を与えています。しかし、この事件は単なる個人の不祥事ではなく、「教える側がコンプライアンス教育を受けていない」という構造的な問題を浮き彫りにしているように感じます。
1.大学で不祥事が起きるのは“想定外”ではない
企業では当たり前のように行われているコンプライアンス研修やハラスメント研修。しかし、大学の教授や准教授といった“教える側”の人たちは、こうした研修を定期的に受けていないケースが多いと考えられます。大学事務局側も、「まさか教授が基本を知らないはずはない」という思い込みがあるのかもしれません。しかし、知識と倫理は別問題です。 研究者として優秀であることと、組織人としてのリスク感覚があることは、まったく別の能力です。
2.大学組織の“権威構造”が不正を見えにくくする
大学は、企業以上に“権威”が強く働く組織です。
〇 教授は、研究室内で絶対的な権限を持つ
〇 学生や若手研究者は、指摘できない
〇 事務局も、教授に強く言いづらい
こうした構造の中では、トップ層の行動がチェックされないままエスカレートする というリスクが常に存在します。今回の事件も、まさにその典型と言えるでしょう。
3.“特権意識”が倫理観を鈍らせる
教授、著名人、タレント、企業のトップ、スポーツ選手など、 立場は違っても共通する心理があります。それは、「自分は特別だ」 という無自覚な特権意識です。
〇 スポーツ選手としての影響力
〇 大学や著名人としてのブランド
〇 有名企業の肩書
こうした“ブランド”を、自分の力と錯覚すると、倫理観が崩れやすくなります。そして、周囲が注意しないため、本人は気づかないまま行動がエスカレートしていきます。
4.トップ層ほど“教育されない”という矛盾
企業でも大学でも、最も影響力のある層ほど、研修を受けません。
〇 忙しい
〇 自分は分かっている
〇 誰も強制できない
こうした理由で、最も社会的リスクに晒されている層が、最も無知な状態に置かれるという矛盾が生まれます。今回の事件は、まさにその危うさを示しています。
5.今回の事件が示す本質的な教訓
〇 権威のある立場ほど、倫理教育が必要
〇 「知識がある=倫理観がある」ではない
〇 組織は“上層部こそ研修を義務化”すべき
〇 共同研究や寄付金など、利益相反の管理が不可欠
〇 不正は“個人の問題”ではなく“構造の問題”
大学、企業、スポーツ界、芸能界。 どの世界でも同じ構造が潜んでいます。
<おわりに>
権威のある人ほど、学び続けなければなりません。今回の東大収賄事件は、大学だけの問題ではありません。“教える側”“影響力を持つ側”が、コンプライアンス教育から最も遠いところにいるという構造的な問題を示しています。権威・影響力・ブランドを持つ人ほど、『自分は大丈夫』という思い込みが、重大なリスクの顕在化につながります。
なお、今回の大学教授による事件では、企業との共同研究など外部と接触した場合には、必ず面談記録を作成し、大学事務局へ報告するという再発防止策が考えられますが、上記のとおり、根本的な課題は教授に対する教育不足が原因であるため、再発防止策としては不十分です。必要なのは、“教える側こそ学び続ける”という文化づくり です。



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