改定案の4回目は、保険会社による代理店への出向です。今回新設される項目です。保険会社の社員が代理店へ出向する制度を知らなかった方は多いと思います。本日は、できるだけ分かりやすい言葉で、ご説明する所存です。
まず、保険会社の社員が代理店へ出向すると接するリスクにつき、ご説明します。出向者の人件費のうち、代理店が一定額を負担し、残りを保険会社が負担します。代理店は少ない負担で高いレベルの出向者を得るので、過度な便宜供与に抵触するリスクが生じます。また、出向元の保険商品の優先的な取扱いを誘引し、顧客の適切な商品選択の機会を阻害するリスクがあります。
加えて、顧客情報につき、出向元保険会社と共有を行うなど、不適切な情報の共有を行うリスクが生じます。個人情報保護法、不正競争防止法、独占禁止法に抵触するリスクが高まります。特に、規模の大きい乗合代理店で起きやすい事象です。
その他、出向者が代理店業務を行うことにより、代理店の自立を阻害するリスクが生じます。保険会社と利益相反する事象があった場合に、不適切な対応を起こすリスクもあります。これは、自動車修理業を営む代理店と保険会社の間に生じる利益相反と考えると、理解しやすくなるでしょう。
出向制度は、出向者特有の弊害をもたらすリスクがある制度です。今般の改正では、代理店に対する不適切な出向を防止する意味合いで、新設されました。今後は、損害保険会社の社員が代理店を営む企業へ出向する制度は、廃止になるでしょう。なお、生命保険会社の社員が代理店へ出向する場合にも、同じリスクが生じます。
保険会社の社員が代理店へ出向すると、便宜供与を疑われる、比較推奨販売を歪めると疑われる、保有契約における個人情報の流出を疑われる、契約募集においては不正競争防止法や独占禁止法への抵触が疑われる等、代理店は多くのリスクを伴います。
監督指針の改正案には、保険会社に対する態勢整備、出向社員がいる場合の留意点が記載されています。もし、自社に生損保問わず、保険会社から出向中の方がいれば、速やかに当該保険会社のコンプライアンス担当へ相談して下さい。但し、既に保険会社から転籍している社員は、除きます。
保険会社から転籍してきた従業員がいる場合には、上記のリスクに抵触する行為がないか確認すると共に、コンプライアンス研修の機会を通じて、具体的な事例を示し、転籍者とその上司が、法令違反に対する理解を深めるように、お取組み下さい。外部研修講師が必要な場合には、弊社へご相談ください。本日は、以上です。



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