素材産業大手の子会社にて、製品の品質検査の不正に端を発した不祥事の全容が報告されました。主な不正行為は、検査結果の改ざん、ねつ造、不正検査、虚偽記録の記載、顧客に報告すべき事象の未報告でした。本日は、度重なる製造業の品質不正と検査不正について、考えてみます。
昨今、相次いで製造業にて製品検査の不正に関する報告が行われています。製品を作る側が、検査まで行い、その結果を信じて製品を納入するスキームにおいて、検査に合格しない製品を意図的に顧客へ提供しています。これは、顧客が一般的な品質管理基準より高い基準を要望することから、製造原価を考えると、要望に合った製品が作れない、コストに見合わない、納期に間に合わないなどが生じます。
その際、顧客の要望に至らない製品でも、一般的な品質管理基準は満たしているのだから、大きな問題はないと考える製造業の製造部門長はいないと思います。それは、製造者のプライドが許さないからです。ところが、実際の現場では、製造部門が販売部門より力が強いことが多く、製造技術は社内でも非公開な部分が多いことから、製造過程の結果は、ブラックボックスになりがちなことが、拍車をかけています。
今まで品質不正を公表した企業には、共通点があります。製造部門だけが不正を知っており、販売部門は知らないという点です。対策としては、製造部門以外の部署が、定期的に点検する仕組みを強化して、監査部門とそれ以外の二つの部署から、常時監視されている構造にすることも考えられます。また、製造部門のトップ以下、意思決定を行う管理職を不定期にその他の部署をローテーションすることも対策となり得ます。これは、早期発見とけん制の両面の機能を持ち合わせています。
検査不正と品質不正は意味が異なります。検査不正は、検査基準に対して不正な判定を行う場合に使うべき言葉であり、品質不正は製品と仕様書の間に瑕疵がある場合に使う言葉です。報道は企業に寄り添って少し優しく記述しているようですが、起こったのは、あくまでも品質不正であり、検査不正ではないというのが、私の見解です。発生した事象は重大問題です。
今現在、自社の品質不正を既に認識していて、公表を検討中の企業があるかも知れません。製品と仕様書の間に瑕疵がある場合は、品質不正です。不正の意図の有無は別として、速やかに不正行為を停止して、公表しつつ、全容解明に努めてください。



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