早期退職制度

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大手生命保険会社が、内勤従業員の10%近くにあたる1,000名の早期退職を募集する旨、報道がありました。対象は、勤続15年以上、年齢50歳以上で、グループ内外へ出向中の方も含まれるそうです。本日は、早期退職制度について、考えてみます。

企業側から考えてみると、早期退職制度は、従業員のうち一定数が今後、適切な職位や担当業務が足りない場合に実施するようです。社内の年齢層のひずみを是正する為とする企業がありますが、ひずみがあっても与える職位や担当業務があれば、早期退職させる必要はないはずです。

早期退職制度の募集範囲を見ると、当該企業が従業員の育成を諦める定義が分かります。これは、新卒や中途採用で入社を検討している方は、企業の価値や実態を判断するのに有効と思われます。

当該企業は、勤続15年以上、年齢50歳以上が対象ですから、従業員の育成期間は15年間で、16年目以降に従業員の存在価値を判断することになります。また50歳以上になると、与えることが可能な職位や担当業務が極端に少なくなり、自身の能力や専門性を発揮できない環境になり得ることになります。

本制度に応募すれば、通常の退職金に月額基本給の最大48カ月分を上乗せするそうです。要すれば、年齢50歳の方に4年分(48か月)を前倒しして支払っても、企業側にメリットがあると考えるべきでしょう。

本日は企業側から見て考えてみましたが、従業員側から見ると別の景色が見えてきます。各従業員の能力や専門性は、均一ではないからです。例えば、運用について一定の見識や経験のある方は、通常の退職金に加えて月額基本給の2年から4年分を上乗せされることで、退職時に想定していた金額より多くの運用資金を調達できます。専門性のある業務を担ってきた人は、他の企業への転身や起業独立もあり得ます。

とは言え、突然に対象となった従業員の方々の気持ちを察すると、不安でしかないと思われます。企業側は、従業員の退職後の生活を創造させ、寄り添った面談を行うことで、本制度の活用方法を伝える必要があります。早期退職制度の流れや締切を一方的に説明するのではなく、各従業員のこれまでの経験の棚卸しを行い、各人が置かれている環境や持っている専門性などに気付かせることも必要と思います。

以前は、早期退職イコール、首切りやリストラと考えられていましたが、セカンドキャリアのバリエーションが広がることで、人生の楽しさも拡がり、必ずしも良くない制度ではないと考えられるようになりました。自分の能力や専門性、人生で健康なうちにやりたいことなどを整理して考えてみる機会が多いほど、本制度は有効なものになると思います。

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